阪急電車を終点、河原町で降りて。地下の階段を上がると、そこは歩行者天国だった。
その風情は、足を踏まれたことのある祇園祭を思い出させる。
これを天国と呼んでよいものか。むしろ地獄ではないのか。
そのまま道なりに東進し、祇園と言う名の地獄を抜け、神社に参拝する。
赤城さんとご縁がもっとありますように五円放り込んで。
パン、パン。柏手打って。
赤城さんが今年も幸せでありますように。
その時脳裏に赤城サンの幸せそうな顔と、ぎゅっと抱き締め寄り添う原田さんの姿が浮かぶ。
なんかムカツクな。
願うくらいタダだろ。おれと赤城さんに、幸せを。
……それじゃまだまだ、おれと、赤城さん(+原田さん)って読めるなぁ……
おれと赤城さん、そして原田さんと分離するためには……
これだ。
おれと赤城さんが幸せで、原田さんが不幸せになりますように。
カンペキだ……!
おれは満足し、微かに微笑むと踵を返した。
「何を、祈ったの?」
おれを追いかけるように、声がする。おれは振り向く。
「おれの幸せと、赤城さんの幸せを」
するとフフ、とその人は笑い、
「奇遇だね。おれも、おれと、赤城さん、て人の幸せを祈ったよ」
と言う。
「おれの幸せは?」
「公園抜けて、清水寺行こうよ」
おれの言うことを無視して、ポケットにつっこんでるおれの腕を取り、引き寄せる。
「こうやってあなたに付き合ってやってる、おれの幸せは?」
するとその人はおれを見上げ、またフフ、と笑う。そして目を伏せ、
「祈ったよ。カズ君の不幸せを」
赤城さんより毛先のくせを強く感じる、長めの前髪の間から、やはりきれいにカールした睫を開いて、おれを見上げる。
前に潮崎さんに世話になっているとき、おれと潮崎さんの仲をやきもきしたののちゃんが、赤城さんに似てると思うよ、と紹介してくれた人だけど、確かに似た顔立ち、体つきだとは思うけど、その長い睫のせいか、右目の下の泣きぼくろのせいか、赤城さんより強い媚びを感じさせる。赤城さんよりずっと女っぽいというか、華麗と言うか、赤城さんが一輪一輪は清楚な桜なら、この人はゴージャスな薔薇だ。
「キスして」
そのゴージャスな潤んだ瞳でそう言う。
「おれ別にホモなワケちゃうけどな」
「おれのこと抱くくせに……」
そう言って瞳を閉じる。くるりと回った睫が、象牙みたいな肌に落ちる。
その横には、泣きぼくろ。
そのほくろにキスをする。ほくろが寂しそうに見えたから。
「おれの不幸せは、白石さんの幸せなん?」
おれはその人の名を呼ぶ。
白石さんは艶たっぷりに笑い、
「そ。カズが不幸そうにしてればしてるほど、おれは幸せ」
「ひどいな。おれそんなに恨まれるようなことしました?」
するとむっとし、
「恨まれまくりやろ、今日かって、すっぽかしたあの子とか、あの子とか、」
「おれは別に約束なんてしてませんでしたから。でも、強引に連れだしてくれた白石さんには感謝してますよ」
おれは笑いかける。するとちょっと怒ったような顔して、目元を紅く染め、フイと横を向く。
「おれが不幸だと、白石さんは幸せ……?」
おれはもう一度訊いてみた。
「おれが幸せそうにしてないと、白石さんも幸せじゃないんちゃう……?」
おれの胸に身を預け、凭れるようにして見上げていた白石さんは、
「うぬぼれんな、」
と言ってどんとおれを突き放した。
「地主神社行って、恋の占いしよ、」
おれに背を見せて言う白石さんを、
「そんなんより、ホテル行って今年の身体の相性占った方が確実じゃありません?」
そう言って抱き締めた。
END
2周年アンケおまけ読んでない人は、何コレ?な内容でしょうね。読んでる人も、まさか私がこの人(白石さん)ネタ持ってくるとは思ってなかったのではないでしょうか……ええぇぇぇ?と思われてそうだスマン。いやこの2人をそう発展させる気は……もごもご。ないわけでもないけど。モゴモゴ。アイマイフィーリングが好きなのモゴモゴ……最後まで意味のないご当地ネタでした。すんませ。
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