グロリオサ 2

「彰、おい……、勉強は、」
「比佐史……今日はちゃんと早く帰ってきたな?昨日はどうしてやろうかと思ったぜ……」
 覆い被さられたまま、首筋に顔を埋めてしゃべる彰の熱い吐息に、比佐史は思わずぎゅっと顔をしかめ首をすくめる。
 彰は、普段親の前や、人前では「比佐史さん」と呼んでいるくせに、2人になって、こういう時間になると、脅すように最初だけ低い、腰にくるような声で「比佐史」と囁く。相手はたかだか14の、自分の年の半分も生きてない子供なのに…といまいましく思いながらも、感じてしまう自分に比佐史は自己嫌悪を感じる。
 でもそれが、余計身体を過敏にさせ、より強い快感の元になっていることにも、薄々気付いていた。
 深い自己嫌悪。早くこんな爛れた暮らしから逃れて、マトモな世界に戻りたいと比佐史は思っていた。自分以上に、まだ世界観も定まっていないような年頃の彰がこんなことに熱くなっていることに、恐れを感じていた。
「付き合いだろ……?飲みにもいくなとお前は言いたいのか」
「ああ。言いたいね」
「一晩くらい我慢できねぇのかよクソガキ」
「穴見ただけで勃つくらいヤリたい盛りの中学生に、聞くだけムダじゃねえ?」
 そう言う間にも、彰の手は慣れた手つきでネクタイを抜き取り、シャツのボタンをひとつひとつ外していく。着替えを許さなかったのは、時間を惜しんでのことではなかった。比佐史の大人としてのプライドを剥ぐような心地がして、スーツや、糊の利いたシャツを脱がせるのは、彰にとっては興奮剤の一種だった。
「もういい加減にしろ……!お前マジでカノジョいねーのかよ」
 比佐史が投げつけるように、イライラと言う。すると彰は少し身を起こし、きらりと光る目で比佐史を睨め上げ、ニヤニヤと口元歪め、
「どう思う?」
と言う。比佐史は顔を逸らし、
「どう思うって……モテんだろ?」
「まーね。さっきの女も、ほんとはつきまとわれてんだけど。……どー思う?」
「どう思うって…何をどう答えて欲しいのか分からないけど、折角好かれて年相応のマトモな付き合いするチャンスなんだから、付き合ってやれ」
 比佐史のその言葉に、彰はさっきまでのいたずらっぽい表情を引っ込め、ぎゅっと唇を噛んだ。そして
「言っただろ、受験の邪魔だから、」
「おれにこんなことする位なら、マトモにカノジョ作ってヤリまくればいいんだよ、悪趣味の、変なガキめ、いい加減おれなんか飽きれ」
 すると早速、いきり立った硬い物が布越しに太股に擦り付けられる。比佐史は寒気がしたように、ゾクゾクと皮膚を震わせた。
「おれは、あんたに飽きたくはないんだけど?女マジでどーでもいいし…。メンドクサイ。大体女は本番やらしてくんないじゃん?ヤッたらヤバイし…おれ、比佐史さんの方が、まだまだずっとイイ。楽な関係で、」
 イタズラな右手が、スラックスのファスナーを下げ侵入してくる。その動きにビクリと比佐史は反応を返してしまう。羞恥で身を捩る。するとその動きにより一掃はだけられた胸元に、彰がしゃぶりつく。
「あ……っ」
 これだけ悪態を付きながらも、比佐史は本気で彰の下から逃れようとはしない。出来ない理由があった。その理由のせいで、更にずるずると自分をきつく絡めていくような関係が塗り重ねられていた。
 イヤなのに、本気で。
 彰が自分と勉強などする気がないのも分かっていた。教えることもない。必要がない。勉強の誘いは、「夜の合図」と化していた。
 やわやわと揉みしだかれて、芯を持ちはじめる感覚を、比佐史は腰を揺らし、足をずりずり…と動かして堪えようとする。
「だからもっと、楽しもうよ……?」
「ん……」
 おざなりに熱く湿り気を帯びる前を撫でた後、股をくぐるように後ろに回し、彰の指が遠慮なく突き入れられる。反射的に、喘ぐように収縮する。
 その時階下から聞こえたバラエティの笑い声と、佐和子の笑い声。比佐史は身を固くし、息を詰める。
 ――姉さん。
 焼き切れるような罪悪感。
 慣れた舌はぽつっと立ち上がった小さな粒を嘗め回し、刺激する。
「勉強……」
「おれ勉強なんかしたくない」
「な…何を今更…」
「おれ学校なんて、行きたくねー。早く就職して、金稼ぎたい」
「何言ってんだよ。中卒なんてろくな仕事ないぞ。大学まで出ておかないとツブシがきかないんだぞ、」
「でも、高い金払って大学まで行っても、比佐史さんみたいに中小で薄給でリストラに怯えてヒーヒー言うんなら中卒でもいいや」
「………おれはともかく、お前は勿体ないんだから、絶対そんなバカなこと言うな、」
「だってさ……」
 このままじゃ、まだまだ時間がかかるじゃないか。こんなに比佐史の身体をねじ伏せても、一回り以上の年の差はどうにもならない。埋められない。自分はまだまだ、10年近くも半人前のままで、ましてや今は全くの無力な子供。それが腹立たしく、いつも必要以上に居丈高に比佐史に接してしまっていた。でも中卒なら、あと一年我慢すれば、自分で金を稼いで、一人前になって、こんな虚勢も張る必要なく、きっと自分は……でも今そんなこと言えない。目を伏せ喘ぐ比佐史には、その時の彰の奇妙に歪んだ顔は見えていなかった。
「……しないんなら、おれ帰るぞ、」
 体を反応させ、荒い息を吐きながら、言うと、目が覚めたような彰はしどけない比佐史を見下ろし、くすっ、と笑う。その息が濡れた熱い肌をひんやりと嬲り、熱くなったモノがぶるっと震え、情けなさに比佐史は顔を背け、唇を噛みしめた。
「この状態で帰れんの?やっぱトシ?…まぁまぁ……比佐史さんがそんなに勉強好きとは、おれ知らなかったな…じゃ、机で大人しく勉強すっか。ね?」
 ほっと息が漏れる。
 その隙に、気のゆるんだ隙に更にずっと奥に指が食い込む。そしてヒヤリとした液体の感触。それが入り口から、奥へ奥へと押し込まれる。感じるところを内から指先でくすぐられ、びくりと反応を返したところで、一気に引き抜き、彰は足を開かせ突き入れる。
「な……、」
 そのまま彰は器用に比佐史の上半身を抱き上げると、身体を繋げたまま身体を回転させ、自分に引き寄せながらベッドから立ち上がる。ぐるりと肉を巻いて抉る感覚、立ち上がる時の予測不能な動きと刺激。比佐史はなすがままにずるずると立ち上がる。
「うわ……やっぱくる……ね、スゴイだろ比佐史さん」
 どうしても深くなる結合の中、堪えきれないように彰の物が暴れる。そのままベッドと机の真ん中までよろよろと移動すると、我慢出来ないのか立ち止まり彰は比佐史の身体を揺する。
「あ……」
 立ったまま、深く深く抉られ、奥の奥まで強く刺し貫かれて、比佐史は自分の身体の主導権が確かに彰にあるのをガクガクと震える中感じていた。自分の熱く柔らかな内面を内から乱暴なまでに抉る硬い凶器。
 ……また、でかくなりやがった……。アソコも、身体も。もっと小さい時から慣らしてあるからいいものの、イキナリこれをぶち込まれては、ひとたまりもない…と比佐史は回らない頭でおぼろげに思う。自分より若いだけあり、身長差以上に足の長さの差があるらしく、不安定につま先立ちで気を抜くと恐ろしい程食い込んでくる。そのキツいものをねじり込まれる苦しさに腰も砕け、目眩すら覚えそうになりながら、自分を支えられず、比佐史は背後の彰にグラグラする頭ごと身体を預けていた。彰も不安定な姿勢で比佐史の熱く力の入らない身体を抱き締め、自分を支えながら腰を前後に揺らめかす。
「あ……はっ……」
 比佐史の、その、まるで首の座ってない赤ん坊のような頭から、喘ぎが零れる。
 サラサラと頬をなぶる薄い色の髪を彰はそっと食んだ。
「あぁ…あっ!ん……」
 比佐史の身体が彰の腕の中で跳ねる。その途端縋り付くように肉が絡みつき、締め上げる。彰は心地よさにクラクラする。
「………」
 殆ど同時に達する。彰は比佐史の中に叩きつけるように。比佐史は堪えきれず前方に向かって。
「イイ。比佐史さん。すっげイイ」
 彰は耳元で囁く。そして息を整え、前を見る。椅子に、机の上に広げられていた白いノートや参考書にまで、比佐史の飛沫が飛んでおり、スタンドの明かりを反射してヌラヌラと光っている。
「……あーあ。比佐史さん。オレの聖域犯しちゃった。カパカパになったらどうしよう、ねえ比佐史さん?授業中比佐史さんのセイエキの匂い嗅ぎながらさあ、おれ授業できねえよ」
「お前がこんな体……姿勢で始めるからだ。何が聖域だ…」
 おれの聖域なんて……心の聖域なんてずたずたなのに。比佐史は唇を強く噛む。
「じゃ、風呂入ろ?」
「………」
「早く大人になりたい」
 ぽつっと、彰が言った。

うーん。実はも一つパターンがありました。椅子に座って…エヘエヘ。でもこっちの方がいい感じな気がしちゃったので。どうよコレ?もしかして、もしかしなくても王道っぽいんだけど、甘かったりするかしら。

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