ブレイクスルー -7-

「…で、就職はどう」
「うん。面接には行ってるよ」
「何の。絵か何か?」
「う~~ん。結局、写植かも知れねー」
 おれはコタツの上でスクリーントーンを切りながら、言う。
「写植。結局そーすんの?」
「おい。終わったぜ。次は?」
 おれはタバコに火を点ける。そいつ、柴本は「えっ、」と取り乱す。
「えーっと、どうしよう、」
「ベタか何かないの。消しゴムかけでもいいけど」
 日曜の今日、おれは彼の所に、原稿の手伝いに来ている。彼は、達っちゃんと同じ会社、つまりおれの元同僚の一人だ。
 原稿、というのは同人誌で、その締切がヤバイと呼ばれている。
 いわばアシだ。けっこー面白い。ベタぬり、トーン貼り、…トーンけずり。
 ヒマだから忙しくなったらいつでも呼んでね、と言ってある。
 達っちゃんと住み始めて初めての日曜なのに、彼は前から約束してたからと高校時代の友達と遊びに行った。
 …別に、毎日会ってるし、デートしたいとか、そんなんじゃないけど、なんとなく、釈然としないものを感じる。
「面白そーだな。おれも何か書こうかな」
「やめとけよ。金かかるから」
 自分はカラッケツでやってるくせに…と思う。
「女の名前で男同士のなんか書いたらラクかも」
「気持ちわりー。受けないぞ。リアルすぎて」
「そーかー。エグイよな」
 全く、男も女も、同人する人は(女が多いみたいだけど)、ネタとして同性愛を書くくせに、現実の自分の同性のは気色悪がるやつが多いもんだ、と思う。
「まだ仕事中に寝てるんだって?」
「何で。うん、…そーだけど」
「達っちゃんに聞いた」
 彼はくるりと振り向いた。
「そーいえば、二人で住んでるんだって?」
「何で知ってるの。…部長が?」
 彼はうなずいた。
「おれが就職できねーし、金ねーから、一緒に住んでくれてる」
「そこまで仲が良いとは思わなかった」
「おれも…ね。これで田舎に帰らずに済む。ウレシイよ」
 外はとっぷりと暮れてる。達っちゃんは、遅くなるんだろう。
「もう帰ろーかな。どう、上がりそう?」
「うん、イイよ。…また来てね」
「ハイハイ…電話貸してよ」
 おれは家に電話をかけた。出ない。切っておれは原田の家の番号を押した。
 彼はいた。おれ、と言うと何、と問うので、
「電話してやってるんじゃねーか。ひまかと思って」
「ひまはオマエだろ」
「残念でした」
 おれは少し間を置き、ドキドキしながら、
「今から…どう。会う?」
 彼はくすくす笑い、
「思うツボだな」
「帰るアシが欲しいんだ。迎えに来てよ」
「なんだぁ~?アッシー(※時代ですからね)か?足元見やがって、」
「それ、シャレ?」
 おれは笑う。
 彼は渋々承諾すると、待ち合わせ場所を言って電話を切った。
「達っちゃん?」
「ううん。…別のヤツ」
 人通りの少ないそこ、高架下で待っていると、クラクションが鳴った。庶民派っぽい、紺のファミリアだった。
 原田は出てくると、抱きすくめた。どちらからともなくキスをする。
「お前こんなとこで何してんだ」
「柴本さんとこ」
「ふーん」
「わざわざ来てくれて、どうも」
「いやいや。ホテルにでも行こうか」
「ばぁ~~か言うなよ。帰るだけだって。…もう、Hしねえぞ……」
 車に乗り込むと、凄い勢いでスタートする。
「荒っぽいな。もっと助手席のこと考えてくれよ」
「乗せてやるんだありがたく思え」
「おい……道が、違う」
「ドライブしよーぜ。そしてホテル」
「よせよ、怒られる、」
「何言ってんだよ。わざとらしい。分かってて呼んでるくせに。おれはそんな、都合のいい男じゃないぜ。いやだったら飛び降りろ」
「分かった」
 おれがドアに手をかけると、彼は
「おいおい、ほんとに開けるなよ。分かった、分かった。おれだってそんな、セックスだけの男じゃない。ホテルには行かんから安心しな」
「どうだか。……」
「お前もいい根性してるよ。そう思うんならなぜおれを呼ぶ」
「アシが欲しかったから」
 真っ直ぐな道に入り、アクセルを踏み込む。車の間を縫い、追い越して行く。
「ひええぇぇ、」
「なーんだよ。珍しくねーだろ」
「実際問題として死にたかないよ。若くねーんだから、こんなバカはやめろよ、」
「まだ若いもん、ぼく」
「若かねーよ。おれたち25だろ」
「おれまだ24」
「変わりゃしねーよ。サイドブレーキ引いたろか、」
 彼はサイドブレーキへと伸びたおれの手をはたいた。
 カーステからは、ドリカムが流れている。
「ドリカム!いいけど、お前ドリカム好きなの、」
 何かそぐわない気がして、ニヤついて言うと、
「いいじゃないか」
「そうだったんだ。へえーっ。…ねえ、原田は、何が好きなの」
「えっ、お前」
「違うだろ……!食べ物とか、」
「お前の身体」
「……!そんな無趣味のヤツは、おれと合わねーよ」
「お前趣味の塊っぽいもんなー。お前、何聞いてんの。最近は」
「……。電気GLOOVEとか。チャラとか」
「変わってる」
「でもあの打ち込みの音、いいだろ。おれも打ち込みで音楽作ってみたいなーと思わない?音楽はやっぱり、ハウスだよ」
「………」
 おれはフンと思う。
「達っちゃんて、もっとフツウだろ」
「今度ZARD(※流行ってましたからねぇー。私はどーでもいいタイプでしたけどだからこその設定)のライブに行く」
「いいな。お前はどうなんだ」
「結構いいと思うよ」
「あのな、釣りに行く?」
「釣り。…どーでもいい」
「ゲーセン行こか」
「そーね。……」
 おれは外の景色を見た。いつの間にか、山の上へあがっている。
 視界が開け、眼下に夜景が広がる。
「キレイ。…ね、ラジオにしていい?」
 そう言っておれがFMにすると、ポリスの「見つめていたい」のカバーが流れている。
「これの元歌好きだな」
「ポリスか。ポリスはいいね。おれも良く聞いた」
 次にSASの、「エロティカ・7」が。
「これも、好き」
「やっぱりお前は、好き者だ」
 ニヤニヤと原田が言った。
「お前は」
「おれ?好き。サザン全部持ってるし」
 途中で降りて、下界を眺める。少し肌寒いが、いい気持ち。
「なんか別世界みたい」
「何が」
「下界と、ここ」
「大きく出たな。下界だと。神サマかお前は」
「うん」
 原田が肩を抱き寄せるので、崖から突き落とそうとする。
「殺したら帰れねーぞ」
「おれ免許持ってる。車はおれが貰うから気にするなよ」
「道連れだ」
 原田が引きずろうとするので、「うわ、」と腰を引く。
「今度皆でキャンプに行こうか」
 おれは「……」と黙る。
「また皆で会うの?」
「お前の就職が決まったらな」
「もう泊まるなよ」
「泣いて引き留めるなよ」
 バカバカしいと思う。原田がくしゃみする。
「また、くしゃみ……」
 おれは顔をしかめる。車に戻る。原田は
「カーセックスしようか」
「早く、帰ろ……!おれが運転する」
「お前みたいなペードラにステアリングを握らせるか。ぶつけたらひどいぞ」
「ねえ、冗談抜きに一度運転させてよ」
「……いやだなあ」
「こんなくねくねした道じゃなくて、港か何かの、車の少ない、真っ直ぐなところをさ、……」
「今から行くか?」
 おれは時計を見た。9時近い。
「帰ろうよ」
「まだ9時じゃねーか。ガキじゃあるまいし。カラオケ行こか」
「裏日本へ温泉に浸かりに行きたい」
「何言ってんだ、お前」
「それがダメなら、帰りたい」
 原田は、暫く黙り、「よし、」と言うとサイドブレーキを引きギアを入れるとアクセルを踏み込んだ。山の真っ暗な方へ上る。
「おい、どこ行くの」
「裏日本」
「ウソだって……早く地上に帰りたい、」
「カラオケがいい?ゲーセンにする?それとも飲みに行く?」
「お願い、もう帰して、」
「ふざけるな。よし、久々にカラオケ行こー。色々練習してーからな」
 原田は途中でUターンすると、夜景を目前に山を下り始めた。
 カラオケボックスではべたべたと寄って来、肩に腕を回して、その腕にマイクを持ち顔を寄せて歌ったりする。酒気を帯びるものはオーダーしていない。原田は酒に強くないから、自重してるのだ。おれはしっかりと、ビールを頼む。
「よせよ、カメラで見られてたらどうする、」
 聞く耳なぞ持っちゃいない。歌を中断しない。
「デュエット、しよか……」
 マジな表情でせまる彼。そら来た。
「お前、素面とは思えねえ。充分だよ。イカれてる」
「何だと」
「うわわわ、」
 首を掴まれ、揺さぶられた。デュエットした。曲名は……何だっけ。
 おれはユニコーンも好きだ。った。もう解散したからな。「メイビー・ブルー」とか「シュガー・ボーイ」とか……おれは「シュガー・ボーイ」を入れようとして、はたと手が止まった。この曲は、今思うにヤバイ曲でないかい。
 「大迷惑」でも歌おうかな。それとも「働く男」。「命果てるまで」、こりゃまたとんでもない歌だ。
「おい、空いてるぜ」
「あ、うん」
 「メイビー・ブルー」を歌うと、「かわいーい」と原田がからみつく。
 原田が、「おれに」と言って鈴木雅之の「ギルティ」を歌う。
 震える、かすれた声が堪らない。歌詞と相まって、居ても立ってもいられない気持ちになってくる。
 ボックスの中では、1回キスした。
 おれに良心回路はないのかな。なんかあったよな。そういうの。

「仕事は、どうなってる」
「合否待ち」
「どうすんだ。…もし両方、良かったら」
「………」
「良く考えろよ。世間の常識になんか、振り回されずに。もう、そんなに若くないんだから……。それに、こんなにゆっくり考えられる時なんて、そうそう来ねえぞ。思い切って、興味あることやってみれば……?ダメだったら、また考えればいいし。良く考えろ……達もせっかく住んでくれてるんだし……」
「ん……。でも、無責任じゃない?なんかすげーいい加減じゃない?」
「ウチの会社だって1日や半日で辞めたヤツ幾らも居るじゃねえか。何事もやってみなけりゃ本当のところは分からない。おれはしたり顔で損得や世間体をあげつらって所謂イイ会社を勧めたりはしねえよ。価値観ってのは、人それぞれだからな」
「うん……。よく、よく考えるよ…」
「きさまが何者になりたいかを、考えろよ。一生働くんだぞ。おれたちは」
「………」
 窓の外を光が流れる。今は車の中だ。
「そうなんだよな。……達っちゃんが、居るんだし、」
 原田は不意に路肩に止めた。車が何台も横をすり抜けて行く。
「お前、満足してるのか……?」
「満足……達っちゃんに……?してるよ」
「ウソをつけ。だったら何で、お前は今こんな処にいる」
「……原田はどうして、何も気にせず、こんなことが出来るのさ」
「おれは達は好きだよ。でもお前は、ものにしたい。それは全く別の次元の問題だ。おれはしたいことするが、好きになれとは言ってない……ましてや、別 れろなんて、一言も言ったことないよな。……」
「言ってなくても…やることがきついよ。……言ってることも、おかしいよ……達っちゃんに殴られた時、たしかもうしないとか……言ったよな……」
「お前がおれに会いたくないと言ったら、もうおれは会わないかも知れないんだぜ……?本気で言えば。でもお前は今日電話してきた。お前の方が、おかしいぜ」
「責めれば、いいよ……」
「そのことは、責めやしない。…ただ、仕事も、おれと達のことも、よく見つめてほしい。……」
 おれは頭を抱えた。
「おれが、キライか?」
 原田が腕を取る。
「キライ…キライだ」
「ウソだ」
 口付けられる。甘美な口付けが体中を震わす。
「原田は、おれが好き?どうして。どんな風に」
「一緒に居たいから。会いたいから。楽しいから。見ていたい…こういう風に、したい」
 抱きすくめられ、強く抱き締められる。
「分かったよ……もういい」
「身体だけじゃ、ない」
「おれは……あんたといると、ラクだよ。……だからつい、楽しんでしまうんだな」
「そんな悲愴な顔するな。幸せは、自分で掴むんだ。誰も与えてくれたりはしない。…特に、おれはな。奪いは、するかも知れないが……」
「つまり、おれに一任するってこと……」
「お前が決着を付ければ、おれはそれに従うよ」
「……」
 その時また、「見つめていたい」が。これは美しいラブソングだが、スティング自身は嫉妬や、独占欲、……もっとどろどろしたものを歌ったつもりだったらしい。
「スティングが、来るね。……」
「一緒に行く?」
「達っちゃんと行こうかな」
「達に分かるか」
「おれが好きなもの、理解して欲しい」
 おれは原田と見つめ合った。その時おれの顔は思い詰めた顔をしていたはずだ。
「おれの好きな、人には…ドリカムのように。その時、誰が横にいるのか、おれには分からない……もしかしたら、一人かも。……」
 おれは何もかも失ってしまうかも知れない。それが恐くて二股かけてるんだ。
 達っちゃんは、誠実だ。だから結局は安心できる。だけど、原田は、いざおれを手に入れた時、おれなんかで本当に満足出来るのか。彼を取ることは、おれにとっては冒険に等しい。今は、達っちゃんという障害物があるからムキになって燃える材料があるけど、手に入れてしまったら……?振り向かせてしまったら……?
 就職だって、未知の世界への怖れ、失敗の怖れで二の足を踏んでいるんだ。
 安定か、冒険か……。
 安定か、冒険か…原田が車を出す。
「今日はもう送ってくぜ」
「うん。……」
 抑揚のない声で言う。
「おれを、見誤るなよ……。強引で、モラルのない、軽いいい加減なヤツだと思ってるだろうが……」
「おれも、見誤るなよ……」
「最低の評価で見てるから、大丈夫だ」
 ムッとし、顔を上げる。
「それって、どういう……!」
「怒るなよ。アバタもエクボにならんように辛い点付けて見てるんじゃねーか。美化してねえってことだよ。それでも好きなんだから、」
「………」
「義理立ては、この際捨てろ…。達よりおれが先だったら、お前どうしてた」
「それは…分からないよ」
 原田は、声のトーンを変え、
「そう言えば、あの会社はどうだったんだ」
 おれが語ると、原田は笑い、
「休みが少なすぎる。もっと考えれば?……もっと早くに、本当の話手を出しちまえば良かったよなー。それというのも、お前が飲み会をブッチするから……」
「じゃ、あの時そうなったかも、そうしようと思ってたって、こと……?」
「どうかな。気にはなってたけど。見たら欲しくなった。…いや、色々想像はしてたよな。でも押し掛けてまでってつもりは、なかったからさ…」
「お前だったら、全然相手にしなかったかも知れん。最初の相手が……」
「そんなことあるか。……でも、その会社でも、いいかもね……。おれとこの方が、達のとこより近いし。頻繁に会える」
「イヤな予感…」
「ひどい言いぐさ」
 家の側に車を止める。窓に灯りが点いていない。ホッとするような、ムカツクような。もう11時過ぎなのに。
「達は」
「昔の友達と遊びに行ってる。だからお前呼んだの」
「成る程ね」
 原田はおれを見て笑い、
「冷めてるな。別れも近いね」
「ふざけるな。おれに暗示をかけるなって、言ってるだろ……。振り回されちまうんだから」
「よし。お前は、おれを愛してる。深く、深く……」
 おれは耳に栓した。彼がそれを抜き、首筋に口を寄せる。
 おれはヤツの頭を両手で掴み、口付けた。舌を深く絡める。
 離すと、覆い被さろうとするので、胸を押す。彼はフロントガラスに頭を音を立ててぶつけた。おれはドアを開けた。
 運転席側に回り、窓を叩く。彼は窓を下げる。
「痛ぇーぞ」
「お前は殺しても死ねないよ。今日はありがと。楽しかった」
「無愛想な言い方だな。……ヒネクレ者め。お前、キス上手くなったじゃねーか。おれのおかげだな」
「おかげでおれはすっかり達っちゃんにインラン呼ばわりさ。この落とし前は付けさせてもらう」
「あんな程度で、か。もっと凄いこと、教え込んでやるよ……ガンガンと。脳みそとろけちゃうぞ」
「いやだね。バカになりそう」
「充分バカのくせに」
「お前は色情狂だけどな」
「お前もその才能ありっぽいぞ」
「才能だったのか。良かったな。何らかの才能あって」
「お前と言い合ってると、キリがねえ」
「それはこっちのセリフさ…。さようなら。早く帰っちまいな」
「襲うぞ、こら、」
「下らない言い合いは、うんざりだろ…?お疲れさまでした。お先に失礼しまーす」
「また電話するから」
 原田は窓を閉め、エンジンをかけた。おれは手を振り、去るのを見送った。
 タバコに火を点ける。
 2、3本立て続けに吸って、おれは家に帰った。彼はまだ帰っていない。今日は実家に帰るのかな…と思っていると、やがて彼は帰ってきた。
「おかえり。遅いじゃないか」
「スマン。久しぶりで、つい……。いつ帰ったんだ?」
「11時頃」
「人のこと言えねーじゃねえか」
「達っちゃん。……」
「うん?」
 おれは砂壁に両手をつき、彼を取り込むと、見下ろしながらキスした。
 本気を出して。原田のときよりもっと。
 離した時彼は顔を赤くしていた。悪いヤツだ。オレは。
 どうしても笑いが込み上げてくる。おれはくっくっと笑い彼の肩に顔を埋めた。
「赤……ヘンだぞ、お前」
「だっておれ、ヘンなやつだもの」
「そうだけどさ…じゃなくて、……何か悩んでんのか…?こないだの、あれとか……?」
「ううん。別に……。もう、寝る…?風呂入る…?おれはまだ、寝ないけど」
 おれは座りタバコに火を点ける。
「何かすんの」
「Hビデオでも見ようかと思って」
 ふーっと煙吐く。
「一人で見るなよ、ケチ」
「本を読むんだ。本当は」
「どんな」
「頭ん中ぐちゃぐちゃだから、推理小説でも読もうかな」
「頭痛くなりそう」
 彼は顔をしかめ言う。
「般若心経にしようかな。色即是空、空即是色、……」
「そんなの持ってるのか」
「図書館から借りてる。ちょっと読みたくて」
 彼は目を丸くしたままだ。理解しかねるんだろうな。
「ちょっとゲームしよか。達っちゃんに勝ちたい。おれ」
「いつも勝つくせに」
 そして暫くゲームに興じる。彼は負けると頭を落とし、
「お前幾らも出来るもんな」
「おれだって日がな一日やってねえよ。さあ、勝った勝った」
 くそーと言いながら彼は一人でやってる。おれは立ち、
「風呂入るだろ」
 彼は頷くだけ。おれは風呂を沸かしに行った。
「赤、荒れてるな」
「別に。荒れてるとは、思わない」
「ハタから見ると、荒れてるよ」
「気分、害した……?」
「今夜、叩きのめしてやる」
 おれは後ろから抱きついた。彼はうわっと叫ぶ。その瞬間ゲームは終わった。

オタッキー柴本さん、存在そのものをカットしようかと悩んだんですけどね、パート2で彼が居るのと居ないのではストーリーの深みが変わってきてしまうキーキャラなんで、残しました…
私はあんまりゲームしない人なんで、その辺はあんまり…突っ込まないでね!

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