ブレイクスルー4 -5-

 原田は見終わると巻き戻し、その間に立ち上げておいたパソコンで自分が落札したページの画像とコメントをコピーして直ぐに出品した。
「イマイチ?」
 興味なかったけど一応後ろからモニタを見ながら訊いてみる。
「まぁまぁてとこかな」
というのが、ヤツの感想だった。どのへんがどうだったかというと、ラベルのそそるメインモデルが見てくれは良かったが最後の10分しかなかった上にやることあっさりだったので、「まぁまぁ」なのだそうだ。時間稼ぎのどうでもいいモデルの方がやってることは凄かったりするのは、まあ……しょうがないってとこか。あっさりとはいえ掘られて、しゃぶられて、しゃぶってるワケだけど。それのみでオードブルなしのメインディッシュだけって感じというか、まあ唐突でイマイチらしい。
 そのままヤツは出品の一覧のページへ移動し、またなんかめぼしいモンを探し出す。
「また買う気なん……?飽きひんよなお前も」
 あきれてそう言えば、振り向き、
「妬いてる?」
となんだか嬉しそうに言う。
「うん……て言うたら、嬉しい?」
「さあ?」
 そう言ってまた顔をモニタに戻す。何か気になる商品があったらしく、クリックして商品詳細のページを開く。
 原田の好みはそんなに突飛ではない。意外とイモっぽい…と言ったら失礼かもしれないけど、いわゆるガチムチの(ああこんな言葉おれまで覚えてしまうなんて…)人気が高いのには驚かされるが、原田はイケメンのスジ筋タイプが色々されたりしたりするのがお好みだ。
「あ、……」
 何かに気付いたように声を小さく上げ、彼はその商品が気に入ったのかウォッチリストに追加する。今追っている商品はその1点だけのようだった。
 どうでもいいかも知れないがパソコンは共用ではない。個人でそれぞれ持っている。デスクトップのMACが家での作業用として1台、会社や出張でも使う用としてMACのチタンなPOWERBOOKが1台、あとはそれぞれ個人持ちのノートがウィンドウズで1台ずつ、とまあそんな感じだ。全部LANで繋がってネットも出来るけど、個人のメールは個人のパソコンでだけ受け取れるようにしている。共用のパソコンのメーラーには、個人用のアカウントは入れていない。
 とはいえそんなヘンな趣味もないおれのメールなどたかが知れている。原田も知ってる知り合いばかりだ。
 これといった趣味サイトに繁く通うワケでもないし…ゲームも面倒だし、とか思いながら、リビングのテーブルの上の、おれもメールチェック用に起ち上げていたパソコンの前に陣取り、ふと思いついてある単語で検索をかける。素早く表示されるおびただしい数の中の上の方のとあるサイトにアクセスする。
 深い青を基調とした光をモチーフしたフラッシュがいざなうシャープな世界。
 さすがプロ、と唸らせる鮮やかな写真の数々。シャープでありながら、豊かなものに溢れている…土井さんの、サイト。
「一度見て下さい」
と名刺を渡されたとき笑って言った。名刺に刷り込んであったアドレスは会社のMACにはブックマークしてあるが、家のには入れてなかった。
 改めて見てみると、彼のサイトには海外の写真から国内の写真までいろんなものがあったが、グラビア系の写真は置いてなかった。人物を主役に据えてある写真でも、人物がテーマではなかった。人物を「魅せる」ために撮られた写真はなかった。しかしそれが返って、作品の中の人物の内面を浮かび上がらせる。特にモンゴル辺りと思わせる乾いた広い世界の人物の強くまっすぐな瞳が印象に残った。
「写真を撮らせて」
と言ったところで、こういう指向の持ち主だし、男相手にグラビアまがいの写真など撮らないだろう…と思いながら、彼の写真世界を堪能した。
「何見とん」
 いつの間にか後ろに立っていた原田が言う。
「え…と、」
 なんだか答えに窮する。彼は気付いたらしく、
「ああ、あのオトコマエのカメラマンのとこか」
とやや不満げに言う。
「上手いよな。彼」
 そう言えば、
「おれとどっちが上手い?」
「何が…彼に決まってるやん」
「なんかムカつくわ。……一緒に旅行になんか、ほんまはやりたくないわ」
「仕事やんか。……それに2人じゃないし、」
「でも女やんか。夜はアイツと2人部屋やねんろ?ヘンなことされへんように、しっかり気を付けとけよ…お前はやっぱふらふらっぽいから、心配やわ」
 マジで不審げにそう言われて、カチンときたけど、前科があるので何とも分が悪い。でもあれは、まだ恋愛ビギナーだった頃の、若気の至りだから!……言い訳にもならないか。
 その場で抱き締められ、首筋へ、シャツをはだけられ胸元へ、彼の唇が移動する。
「あ、……」
「こういうお前を知ってんのは、もうおれだけでええねん」
 乳首に執拗に吸い付かれ、気持ちいい。熱い息が漏れる。でも、なんか土井さんのこと、写真のことは言いにくくなった…いや、勿体ない気もするけど、断るのが筋だよな。悪いけどお断りしよう。

 高階クンは営業と雑務の合間に、作品集なんかを見ながら、結構真面目に、うなり、苦労しながら企画を立てているようだ。そう思いながらもうすぐお昼な頃、彼を見ると、視線に気付いたのか顔を上げニコリと笑う。
「赤城さんは、どんなんがいいですか?」
 ニッコリ笑ってそう言う。
「は?何が……」
「ウェディングプラン。あ、プランはいらんのか。配りモンとか、何貰ったり、見たりしたら式挙げたくなるかなぁー」
「おれに訊くなよ……」

短いね…

Copyright 2005 Lovehappy All Rights Reserved.