昨日の敵は、今日の相棒(とも) -7- Crazy for You(あなたに夢中)

「お前は、子供なんかじゃ全然ないな」
 帰り道、眼下の海を見ながら吉良が言う。
「惚れるでしょ?」
「一言余計だがな」

 家に帰り着いて、机の上にそぐわない細い花瓶に挿したバラが三本。

 ベッドに二人、並んで座って、その花を見る。すると仗助が身体を寄せてきて、言う。
「おれずっと考えてたんだけどさ、あんたから触るのは平気、でも触られるのはダメなんだよな……」
「妙に静かだと思ったらそんなこと考えてたのか」
「もう我慢できない。早くあんたを抱きたい」
「な?!」
 吉良は自分を掻き抱く。
「それであんたは人の結界に入るには魂の許可がいるという。それの逆が起こってんじゃねーの?」
「どういう意味だ?」
「あんたに触るのにも、あんたの許可がいるんだよ、多分」
 吉良は虚を突かれた思いをする。そんなことは今まで考えたこともなかった。
「触って欲しいと、思うんだよ。……いや思うだけじゃ、多分足りないな。口に出して言ってみろよ。『触って』って」
「な……!そんな恥ずかしいこと言えるかっ」
「言わなきゃ、触ってやれねーぞ。多分。なるべく色っぽく、おねだり風に上目遣いで言ってよ」
「別に触って欲しくない」
「頼むよ……触らせてよ」
 ほだされて、目線を落とすと、
「……触って……みろ」
と言う。すると手を恐る恐る頬にやる。
「かわいくねーな」
「かわいくなくて結構」
 思った通り、触れることが出来た。柔らかい感触をむにむにと楽しむ。
「キスしてって、ゆって……?」
「……」
「頼むよ……」
 言いながら頬に口付ける。心なしかほんのりと温かい。
「……クソッ、キスし……んむっ」
 その途端、食らい付くように口を塞いだ。
「あ…はあ……」
「かわいいな……」
「かわいくなんか……っ」
「かわいげないとこが、最高にかわいい」
「好きにしろ……」
「ああ……思う存分」

 口付けながら胸元に両手を這わせ、襟の中に滑り込ませると、張りのあるすべらかな肌を思うまま撫でられることを堪能する。そしてネクタイに触れると、手早く解いてベッドの下に放り投げる。
 そして上着のボタンに指をかける。まだ服の下がどうなっているのか確かめたことはなかった。服の下に身体はあるのだろうか、見えるのだろうかと少し危惧しながら外していく。と、その手が掴まれる。
「自分で、でき……」
「剥くのも楽しみなんだよ」
 掴む手を器用に逆手に取ると、そのまま上へ持っていきながら身体を圧し掛からせ、ベッドの上に押し倒す。
 目の前にある首筋に柔らかく食いつく。そのまま舌を這わせると、身体に緊張が走り、背がしなる。
 片手だけでボタンをすべて外しきり、そっと伺うと、そこには普通に血の通った色をした、それでも常人よりは大分白い体があった。
 仗助の顔が、目を伏せながら寄ってくる。
 美人、とは違うけど、仗助の顔も随分と色気のある顔をしている、と吉良は思う。一回り以上も年下の子供のくせに。一人前に色気のある男の顔をしてやがる。最近特に魅力的になった、と思うのは単に間違いなく惚れた欲目だと自覚している。体なんて自分より一回りでかい。何か悔しいながらも、その体に包み込まれて心地よく感じているのだから、始末に終えない。
「お前の髪がくすぐったい」
 そう言って、身を捩り微かに笑う。その笑い声ごと、唇に、舌に絡め取られる。


 胸、喉元、脇の下、脇腹、臍の回り、と丹念に愛撫を受け、感じすぎて痺れた舌から唾液が溢れ、口の端から垂れそうになるのを慌ててすする。がうまくいかない。
「や……あ……」
 他人に触れられるなど、記憶にある限りない。
 しかもその手が、熱を帯びていて的確に官能を煽ってくる。
「綺麗だな……」
 呟く声が落ちる。その先には、大きく肌蹴られ袖だけを引っ掛けた裸体が腕を上で掴まれているおかげでやや弓なりに胸をさらけ出している。
 なだらかな白い肌の上に、差し出されたほんのり色づく粒がどうにもエロくて、誘われるまま口をつける。
「……あ、」
 跳ねる身体をぐっと抱き寄せて更に舐め上げる。
 元から色素の薄い男だった。その上健康に気遣っていたから、身体が綺麗なことこの上ない。
 まだ身に残るスーツの下に手をかける。その中心が突っ張っているのを見て自分のそこも充血し硬く張り詰めていくのを感じる。ファスナーを下ろすと、身を捩り抵抗される。
「やめろ……」
「それ言うと、千切れるぞ」
「………」
 それでも逃げようとする腰を、上で掴んでいた手を離し、そのまま腰に回し、身体を密着させながらもう片方の手で服をじわじわと押し下げる。
「あ……や、」
 自然と膝を引き上げ、下げさせまいとする。でも、もう大事なところは過ぎたからいいよ……と手を下着の中に滑り込ませ、ゆるく立ち上がっているものに触れる。
「あ、………」
 一声上げて、息を詰める。身体も固くする。その隙に、下着もろとも一気に引き下げる。そこは、十分に反応していた。
 熱く湿り健気に震えるそれが物凄く色っぽく目に映る。
 正直実際そんな有様を目にしたら現実に戻って萎えてしまうのではと思っていたが、そんなことは杞憂だったようだ。むしろ余計煽られてこっちも熱くなる。
 これを掴んでもっとめちゃくちゃに感じさせたい。その様を引き出したい。泣き叫ぶほど。
 だんだん嗜虐的な欲望が兆してくるのも止められない。
 そっと握りこみ、さすると相手の身体から力が抜ける。腰に回した腕に、重みがかかる。全身をゆだねられている。
 いやいやと首を振るたび、短い髪がパサパサとシーツを打つ。しかしその顔は陶然となっている。
 そしてやっぱり美人だ、とその様を見て思う。
「どうされんの好き?自分でどうやってた?」
 言いながら裏をすりあげ、尿道に爪をかける。
「あるわけな……あっ、」
「ここ、いいよな」
「やめ……」
 実際、生身ではない身では、生理的欲求というものは何一つないのだろう。しかも生前の記憶がない。まるで無垢な生娘にいけないことを教えているような気もしてくる。
 やがて全身に緊張が走り、何かをほとばしらせる。それに濡れた手を見詰め、
「これも、幽霊……」
とちょっと不思議そうに言うと、ぺろりと舐めてみた。
「そんなもの舐めるなっ!」
 潤んだ瞳で睨みあげ、息を乱しながらも文句を言う。
「いやだって不思議じゃん?なんか味あまりしない」
「そんな恥ずかしい感想はいらん」

 仗助は身を起こすと、まだ着ていたTシャツを勢いよく引っ張り脱いだ。腰を浮かし、ジーンズをずり下げる。
 眼下にイッたあとで熱く脱力する身体を眺め、その太ももを抱える。大きく開かせて、自分を受け入れてくれるそこに触れる。きゅっと締まり、拒絶される。
 しかし中は、内臓はどうなっているのだろうか。普通であれば中は空洞なのだろうが、この身体は一体どうなっているのだろう。服を剥けば、ちゃんと欠けたところなく生身と同じ皮膚が、外観が温かな体温と共に現れる。抱きしめれば、確かな手応えと骨を感じる。その手応えが、愛しい。
 つぷりと、中指の腹を押し込んでみる。
「ん……」
 吉良が、身じろぐ。指一本、特に抵抗は感じない。むしろ柔らかくひくついていて温かで誘われる。誘われるまま押し込む。指が締め付けられ相手の口から溜息が漏れる。
「生身と変わんない感じだな」
「こんなときに冷静な感想を言うな」
 息を荒げながら言う。言いながら相手に目を走らせ、既に張り詰めてる立派なものが視界に入ってしまい、あれが入るのか……と怖気づく。
「だってそうでもしなきゃ、おれ……」
 歯止めがきかないよ?と心の中でだけ言う。
 幽霊相手にローションは必要だろうか。ちゃんと色々準備だけはしてある。
「痛い?」
 指を増やして、動かしながら聞く。
「……痛いって感覚は、死んでこの方、感じたことはない気がする……違和感とかはあるが」
「そいつは、助かるかも」
 そして気持ちいいは感じるんだな、とアメニティにこだわる男を可愛く思う。
 自分の先走りだけでは到底足りそうにないので、ローションの蓋を開けることにする。
 早急に中を探り、慣らすと、自分のものをあてがう。
「もう入れていい?」
「あ……」
 眩しげに伏せられた睫の端に口付けると、太ももを掴んで押し開き、体重を掛けて潜らせる。
「……あ、こんな………」
「何……」
「おかしい……おかしくなる……」
「なろうよ、一緒に……」
 そのままぐっと押し込むと、濡れた声を上げながらのけぞる。さらけられた白いのど元と顎裏に誘われ、舐め上げると更に喘ぎが漏れる。
 おかしくなりそうなのはこっちだと、気持ちよい締め付けと温かさに酔う。
 身体の中に異物を迎え入れた方も意識が飛ぶような気持ちよさがそこから襲う。まるで昆虫採集の標本だ、と頭のどこかで思う。ああいう風に串刺され、縫い止められているのに、そこから全身へと滲んでくるこの心地よい痺れはなんだろう。どう考えても征服されたという姿なのに、それにひどく感じてしまう。もっと強く実感させて欲しいとすら思う。
「あ……もっと……」
 その一言でそれが身体の中で一層存在感を増した。
「そんな煽って。しらねーぞ」









 あのあと脳裏に何かがスパークして。今はすっかり疲れて抜け殻のようだ。
「名前、呼んで……?」
「いやだ」
「あんたまだ一回も呼んでくれたことないだろ?」
「だって……なんて呼べばいいんだ」
「普通に呼び捨てすればいいだろ」
「ムリ……」
 仗助は後頭部を抱え、手に触れる違和感を改めて感じる。
「あんたのこの頭の後ろのヤツ、なんだろな」
「さあ……」
「いかにもの封印チックだよな」
「外そうとするなよ。ムリだから」
 そして長々とキスしたあと、
「今日、一緒に風呂入ろ?」
と耳元でささやいた。



多分十年ぶりくらいに大分まともにエロ書いたわー。おばちゃんにはきっつい……けどまぁまぁいい感じに掛けたんでないかい(当社比)結構萌えたしwでもパワーがないから書きたい部分だけ書いたら力尽きた。あとエロ初書き、いや普通のでもだけど、初書きキャラはなかなか名前が出せない…このキャラたちを私が動かしてるの?っていう遠慮というか距離感がある。なんにしても終わって結構肩の荷下りた!

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