天六ミッドナイト・フラワ~ズ  5

前回までの活躍数
道隆
土井
原田
小山
潮崎
達彦
赤城
高階
吉田
野々垣
 
2
-1?
 
 
 
±1
 
1
 

試合:四回裏ツーアウト、1点先行。

「赤……」
 原田がぐいとおれの胸ぐらを掴む。すると高階クンが横からその手を掴み、
「原田さん。今日はあんた特別じゃないの。張さんも言うてたでしょ。踊り子に手…もとい賞品に手を触れない」
「赤は、おれのモンなんじゃ!」
「ちょ…ちょっと、いい加減にしてや、それに幾らなんでも触れたらあかんというのは、行き過ぎ、」
「そうですか?」
 さわさわと高階クンがお尻を触る。
「そ、そんな触り方はダメ!」
 あ~~~ん誰か助けて!
 って思い切り泣き言言いたかったけど、そんなこと言ったら精神的Sの高階クンが喜ぶのが分かってるし、他のヤツにも悪影響の気がして、ぐっと堪えて、睨み付け、高階クンに足蹴りをくらわした。
「いて……ひでー赤城さん、おれには手加減ナシ……」
 傾いだ高階クンの向こうから、バットを担いだ小山さんがおれの胸ぐらを掴みっぱなしの原田の肩をぐいと押しておれの真ん前に立ち、顎を取り、
「赤城君、マジでかわいいな」
とニヤッとして言う。おれはカーッと頬が熱くなる。
「で、でも…前に小山さんは『分からない』って……!」
「あのあとスキーでも言うたやろ。『分かる』って。今は分かる…そうやって赤くなると益々可愛いな。原田には勿体ないんちゃうか…待っといてや」
 そう力強く言って、ニヤリのまま打席に戻る。小山さん……いやときめいてるワケじゃないけど、おれは熱くてドキドキして止まらない。
 すると原田にまた掴まれた。目をやると、怒ってる。
「お前……今ポーッとしてたやろ」
「や、ちょっとびっくりしただけ……」
「ウソツケ」
「マジでマジで。原田君のオトモダチってかっこいい人多いから……!」
 その瞬間、カーンと威勢よく音がする。
 おれも原田も振り向く。ニヤッとおれに向かってこれまたグーをする小山さん。そっと原田を見上げれば、イライラしてるのが顔に出てる。このままだといくら原田でも焦ってドツボにはまって、いくらおれが上げたくてもMVPを上げれないのじゃないか…そんな思いがよぎる。
「原田、あの……、」
 そう口を開いた途端、ナイスキャッチ!の声が挙がる。ライナー性のセンターフライに終わってしまい、小山さんは一塁線上にしゃがみこんだ。
 小山さんて、そんなにおれにチューしたいのかな……。分からない。からかわれてるだけだろうか。そう彼を見ながら思っていると。
「はい。赤城さん」
「あ、ありがと、」
 反射的に言うと、横からおれのグラブを持って道隆クンがニコニコしている。
「お前抜け目ないな……」
 原田が低く言えば、
「印象点を、アップです」
 とても爽やかに可愛らしくニコニコと自分の兄に言う道隆クン。彼の抜け目なさとそういう末っ子らしいヌケヌケとしたとこも好きだけど、
「そういうこと言うと、むしろ点下がるよ普通」
とおれが言うと、表情豊かな道隆クンは愕然と顎を落とした。顔かたちは似てるけどなんだか似てない兄弟…といつも思う。

 次の表もアヤシイながら高階クンはどうにか持ちこたえた。しかし原田は高階クンのフラフラピッチングが気に入らないのか、高階クンを呼んで投球練習にいそしむ。相変わらずイライラしてるっぽいから高階クンに八つ当たりなのかもしれない。その間に、潮崎さんが寄ってくる。
 静かに力の籠もっている声で潮崎さんは、
「赤城君。原田君はあのとき昔の君に原田君より先に会うてたらおれは君を好きにはならへんかったと言うて、その理由になんか圧倒されて納得してもうたけど、今はそんなこと思えへん。おれはきっと君のかわいいとこに気付いて好きになってたと思う…あれからずっとの君の可愛さが、原田君と付き合って以来やなんて思われへん。君はもともと可愛い人やった。むしろ原田君が君のことあんまりええように思てなくて、君の良さに気付いてなかった。そして意地悪しとって君は警戒心出してた、そんなとこちゃう?」
 潮崎さんは、腕を組んだままおれを見ず正面向いておれに語りかける。まさに図星、なんだか焦ってドキドキする。
「赤城君。おれは原田君に負けへんで…おれは今でも、君が好きや」
 見据えられ、真正面から言われておれはもう……身体を何かが一瞬にして駆けめぐり、まずいことながら、アソコが感じてしまった。ビーンと一発シビレが来た。いや立たないけど。打ち抜かれた……って感じ。潮崎さんはいつも、正攻法でダイレクトで、おれを不意打ちにフラフラにさせる。
「じゃ」
 そしてくるりと背を向け、バッターボックスへと向かう。
 緊張が切れる。ふうと息をしておれはベンチへ力が抜けたように腰掛けた。
 となりにいたのは吉田。なぜか身体を硬くしてしゃちこばって前を見ている。そして見る見る顔が赤くなっていく。
「吉田……?」
 おれが怪訝に声をかけると、彼はおれをちらりと見る。
「お前、絶対ないよな。狙ってるとか、そんなん……」
「……あかん?」
 恐る恐る、と言った感じで言う吉田。信じられない……!
 小山さんより信じられない。あんだけウソだ、気持ち悪いと叫んで転げ回り、いつまで経ってもオレ達を見ては分からないを繰り返し、一番普通におれに接しつづけた男。それが吉田だったはずだ。頼まれても男の、おれの唇なんかいやだっていいそうなやつだったくせに……
「おれ、男だし、ずっと前からただの友達やんな?」
「……チューくらい、一回くらい、友達でもしてもいいんちゃうかと……ゲ、ゲーム、やし…」
 ゲーム、のとこを声を裏返しながら言う吉田。し、信じられない……てか、おれが友達としか思ってない吉田とのキスなんか、なんか嫌すぎ、恥ずかしすぎ。うそだ、この吉田の唇とキスなんてありえない…なんだか気まずさの次元が違うような。
「お、おれはちょっとお前とはこのまま、普通の友達でいたいよ、…トイレ行ってくる」
 座ってられなく立ち上がると、背中に誰か当たる。振り向くと達っちゃん。おれを見てこれまたニヤリとする。でも彼のニヤリはなんの邪気も含みもない感じ。そんな笑顔を向けてくれるのが嬉しい。時々しみじみと思う。やっぱり彼の側は、ホッとするのだ。暖かい日溜まりみたいな感じ。
「トイレ?連れション行こうや」
と言ってくれるから、おれはホッと息をつき、「うん」と答えた。
 トイレは特にしたくなかったけど。打順も回って来るんだけど、達っちゃんと2人きりに、羽伸ばせるチャンスだったから。2人で歩いて行った。
「大変やな」
 その道中達っちゃんが言う。
「ほんとに……達っちゃんは、おれの味方やんね」
「なにその味方って」
「既婚者が、変なレースに参加してないよね?」
 すがる目でそう言うと、彼にしては意地悪い感じで、
「まさか……久しぶりにお前とキスできるチャンスやのに。おれ参加するに決まってるやろ。お前の唇、知ってるのに」
「達っちゃん……」
 そんな時代もあったのだと、思い出すと恥ずかしいながらも、なんだか懐かしい。
「また赤くなって。お前昔はそんなに無防備に可愛くはなかったのにな…でもあの頃よりずっと可愛らしい、色っぽい感じになったよなぁお前。ほんまこうして見ると変わったよなぁ……」
「達っちゃんかって、そんなこと言うような人じゃなかった」
 フフ、と笑って彼は俯き、
「でもおれは、おれだけが知ってる物慣れない昔のお前を今でも思い出しては幸せになる」
「達っちゃん…いやや、そんなこと言われたら恥ずかしすぎ、」
ていうか奥さんと子供いるのに…物慣れない、て夜の営みのこと……?おれも思い出して恥ずかしくなる。
「なんで?おれだけの大切な思い出やのに。でもおれはマジで密かに狙ってるから。久しぶりのお前の唇を味わうのを……」
と言われておれは彼を見てられなく、俯いてしまった。おれの身体はいろんな人のいろんな言葉で、肉も骨もトロトロに甘く柔らかにされている気がした。自分の身体が蜜で出来ているような。

今回までの活躍数
道隆
土井
原田
小山
潮崎
達彦
赤城
高階
吉田
野々垣
 
2
-1?
 
 
 
±1
 
1
 

変わらず。ヤバイ。

ちょースローペースが続いております。そして既に試合を投げている感があります(笑)
もう皆に赤城君をトロトロに料理してもらう話にしたいです。それって何P?(おい

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