夏草青山(なつくさあおやま) 3

 こんな状況のせいか、そのノブちゃんの笑みが、とてつもなく冷たく、意味ありげに感じられた。おれはぞく、とした。
「………」
「兄貴、風呂もいいけどさ……、まだコーちゃん動かすのはやめた方がいいと思うよ。ホラ、なんか青ざめちゃって、」
 なんでもない口調で振り向き、ノブちゃんの方を向きながらアキは言う。ノブちゃんに見られる前に、おれは顔を逆に逸らした。
「ね」
 覆い被さるようにしておれの顔を覗き込み、そう言いながら、アキの右手が股間をなぜた。その瞬間、身体がはねそうになり、力を入れて堪えた。
 でも神経はぴりぴりしていて、わずかな刺激にも激しく反応してしまう。手のひら全体で育て上げようとする動きに、あっさりと応えてしまう下半身。
「………」
 何も言えず、口を引き結んで堪える。
「な。だから、もう少ししてから行こうぜ。…風呂は、おれも入りたいし」
 そう言う間も、休み無く蠢く手のひら。
「分かった。じゃ30分後な」
 そう言うとノブちゃんはドアを閉め、出ていった。階段を降りる音が遠ざかる。
「……どうして」
 どうにかそう言うと、アキは
「風呂もいいけどさ……、今、このコーちゃんともう少し気持ちいいことしたい」
 そう言うと首筋を吸い上げる。
「あっ、」
「コーちゃん……気持ちいい?……感じてる、ここ」
 そういって布の上から掴み上げる。
「あほか、お前……!ふざけんな、なんでおれに……、」
 そう言う声も、うわずり気味だった。抵抗しようと身体を揺すれば、より刺激を感じる。
「コーちゃん……おれ、本気。風呂でヌードもいいけどさ……喪服のコーちゃんて、色っぽいから……脱がさせて」
「あほっ、」
 それでも強く身を揺すると、
「30分しかないから…」
といいながら、アキは自分のネクタイを抜くと、おれにのしかかり、身体で押さえつけたあと両手を縛った。
「アキ、」
 アキは身体を下へずらし、股間をなでながら顔を寄せる。そして、ファスナーを下げられた。
「ア、……」
 それを探り当てると、鼻を寄せ、
「いい匂い……コーちゃん、いやらしくて、生々しくていい匂い……」
「へ……、ヘンタイ、」
「ヘンタイで結構だよ」
 そしてくわえられる。おれは声を上げ、背をしならせた。
「おいしい…味も、おいしいよコーちゃん。風呂に入っちゃったら、無味無臭になっちまうだろ。だから…コーちゃんを味わいたかったから…」
「……ヘンタイっ……」
 そんなとんでもなく恥ずかしいことを言われて、羞恥でぐんと感じてしまう。アキは先端をむき出し、強く何度も吸い上げた。
「………」
 声にならない声を漏らす。汗はとめどなく出るけど、暑さはあまり感じなかった。
 すっかり勃ち上がった頃、アキはさっと身を離し、素早く部屋の鍵をかけた。そして直ぐにまた覆い被さる。
「これでちょっと安心さ」
 そう笑いかけると、アキはまたくわえこむ。手を体の線に沿わせ、じわじわと這い上げ、シャツの裾をたくし上げる。
「あ……あっ、あっ……」
 濡れた声が零れていき、簡単に達してしまう。アキは喉を鳴らして飲み込む。
「……アキ」
 ちょっと泣きたくなった。あのアキが、おれにこんなことするなんて。それに、やっぱりイクとこを見られるのは、恥ずかしい。
「コーちゃん……」
 アキは這い上がってくると、顔を背けるおれの頬にキスをする。見たくなかったけど、薄目開けアキをそっと見ると、思いの外真剣に、少し眉間に皺を寄せおれを見ていた。
 そしておれの肩に顔を埋め、首筋にキスを繰り返し
「……コーちゃん……」
と呟く。
「アキ……お前、何でこんなこと……」
「ドキッとしたよ…みっちゃんの子抱いてるコーちゃん……きれいだった。聖母みたいなきれいさだった」
「お前何か根本的に間違ってないか?男のおれが、聖母になれるワケないやん、」
「そろそろ一旦やめるか、」
 そう言ってアキは身を離す。
「一旦?」
 その瞬間振り向き様にパチリと携帯で撮られた。
「アキ……!真剣に怒るぞ、そんなもん撮るな!」
「おれの待ち受け…」
「ふざけるな、ていうかふざけすぎだ、お前、」
「さっきも言ったでしょ。おれ本気」
 汗が額を伝う。アキは目を細め、おれをじっと見ている。そのアキの前髪も、汗に濡れていた。
「汗かきすぎちゃったから、風呂行ってさっぱりしよう」
 そう言うとアキはドアをあけノブちゃんを呼ぶ。
「いやだ……」

 車窓の景色は、緑なす山々と水を湛えた水田の連続。その合間に、ときどき町。冬ならもう暗くなる時間だが、強い日差しが、まだまだ鮮やかなコントラストを描いていた。
 家を出るとき、親戚はもう半分くらい帰っていた。残った親戚は既に片づけられた部屋の一隅で、飲み直していた。
 車で30分くらい走ると、ノブちゃんがバックミラー越しにおれを見て言う。
「折角だから家族湯行こうぜ。新しいいい温泉出来たんだ。露天付き」
 家族湯……!見知らぬ人もいる、普通の温泉だと思ったから渋々だけど、来たのに!おれは全身が縮み上がる。
「家族湯……?おれ、大浴場の方がいい」
「なんで?昔を懐かしもうぜ……着いたぜ」
 ノブちゃんは不思議そうに言う。気付いてない。気付いてないからそんな声を出すんだ。そうだ…気付かれていない。アキも言っていない。だから大丈夫、ノブちゃんがいるから大丈夫だ…そう自分に言い聞かす。
 車から降りると、勢いよく蝉の声が降ってくる。細かな玉砂利の駐車場に足を踏み出せば、木に囲まれた平屋の新しい日本家屋風の建物があった。
「家族湯専門……?」
「そう。ゆっくりしようぜ。っても制限時間あるけどさ」
 ノブちゃんは出て来、ドアをロックしながら言う。アキは、おれを見て微笑むだけ。車の中でも、余りしゃべらなかった。
「………」
 なんだかソワソワして仕方なかったが、ここで「いやだ」と抵抗するのも変な話だ。それに、ノブちゃんがいる。それだけを一縷の望み、って言うとオーバーだが心の拠り所に脱衣場まで来てしまった。
 黙々と脱ぐ2人。ノブちゃんは短くした髪をなで、割に白いが均整の取れた身体を露わにする。アキはあんなこと言ってたけど、親戚だから皆似ていると思う。ノブちゃんの睫も、長目で上向きだ。全部脱ぎ去り、彼がこっちを向く。目は、細くはないがすきっとした印象だった。
「コーちゃん。まだ気分悪い?」
「…あ……」
 おれは言われてネクタイに手をかける。チラとアキを見れば、アキももうパンツだけになっていた。アキはノブちゃんほどには白い感じがしない。そして細い。頭も小さい。髪はノブちゃんよりちょっと長い位。
「脱ぐの手伝おうか?」
 笑ってノブちゃんが言う。
「いや……!」
 おれは首を振り、急いで脱いだ。
 ノブちゃんはざっと湯を被ると直ぐにサッシの外の露天へ行った。そして気持ち良さそうに縁の岩に両手をかけて目を閉じている。おれは、まず洗う。シャワーを浴びる。横を見れば、俯き気味にアキも洗い場に居た。
「アキ……お前、さ……」
「コーちゃん。……洗いっこ、しようか」
「アキ……!」
 アキはそう言うと、石鹸で泡立てたタオルをおれに近づける。
「昔よくやったよな……いじりっことかも」
 アキの方を向いていると、後ろから声がした。ノブちゃんがサッシを開けて入ってきた。
「ノブちゃん、……」
 ノブちゃんに気を取られているすきに、背後からアキが抱きつく。タオルが、胸を撫で回し、乳首を刺激しながら、ぬるぬると股間に滑り込む。
「アキ……!」
「コーちゃん。ごめんな」
 ノブちゃんはそう笑いかけると、……全然イヤな笑みじゃなかった。おれの唇を塞いだ。易々と舌が侵入してくる。
 弾力あるノブちゃんの舌はゆったりと口内を這い回る。刺激され、頭がぼうっとなってくる。
 ノブちゃんは左の親指でおれの右の乳首をいじる。これもゆるゆるとした動きだ。アキが後ろからいじりながら、肩に唇を這わす。背筋が何かが這い昇り、身をよじりながら声を出しそうになったけど、ノブちゃんは唇を解放してくれない。
「あ……」
 やっと離れていったとき、自然に声が漏れた。ノブちゃんはそのまま下へスライドし、左の乳首を舐める。左手はまだ反対をいじり、彼の右手は内股を撫で上げる。
「……やめて……」
「兄貴。約束……」
 唇を離し、アキが言う。ノブちゃんはくすりと笑うと、
「ちぇっ。分かった分かった……じゃ後は、よろしくな」
 ノブちゃんはしょうがないと言った感じで笑い、首筋や胸にキスをしたあと立ち上がる。自分でちょっと育った股間をなでながら。そしてざっとシャワーを浴びる。
「どういうこと……?」
 ノブちゃんが風呂を出て行ったあと、振り向きアキに問う。アキはじっとおれを見、
「兄貴もコーちゃんにキスしてみたかったって……協力してくれたお礼に、ねだられた」
「おれはモノじゃない……」
「でももう触らせない、」
 アキはそう言い、強く抱きしめ首筋の弱いところを強く吸った。
 もの凄く感じてしまい、弓なりに身体がしなる。するとアキにタイルに引き倒され、また覆い被さられる。

おーっと最悪に中途半端。もうちょいのはずなんすけどね……これからまとめあげっ!でもその前に一旦上げ~。もうじき出勤しますので…朝から何やってんだか私(汗)

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