ブレイクスルー4 -26-

「……高階クン、何…しとん…はよ、行きぃや……おれかって仕事が……、」
 きつく吸われ、抜けそうな腰をどうにか支えながら、震えを抑えた声でそう言った。すると彼はくわえたまま、
「ええ。まだ就業中ですから、ちゃっちゃと手早く済ませなあきませんよね」
と言う。その籠もった声のビブラートが響いてビクンと更に感じ、彼の口内を叩く。
「ふ……」
と微かに笑う声がする。体中が熱くなった。
「あれ、今日中にやらな……」
 さっき高階クンの肩に手を置いたときに白いタイルの床に落ちた訂正の入った茶色い封筒に目を落とす。
 このトイレは、洋式で狭いけど汚くはない。小さな明かり取りの窓から、日がさしていた。
 早く取りかかって、終わりたいのに……。原田は今、事務所に居るのだろうか。
「原田は……、」
「上にいてますよ…心配せえへんかっても、」
「心配…?こんなことしといて、心配ないもないわ、もうええやろ…?早う、離してぇや……」
 彼のパソコンに向かう後ろ姿が脳裏に浮かび、後ろめたさで居ても立ってもいられなく、ちょっと萎えた。すると血を集めようとするかのように、今までになく強く吸う。
「………、」
 掴む彼の肩に、きつく爪を立てた。また、育っていく。絡む唾液の音が、卑猥に響く。
「あ……、もうやめて、もうええやろ……?そこまでやったら、土井さん以上や。土井さんは何もしてへん……」
「土井さんだけじゃないですよ」
 もうかなり育ったものに満足したかのように口を離し、腰を両手で掴んだまま、彼はおれをくるりと回し、自分は洋式の便座に座る。そしてまた腰を引き寄せ、舐め上げられる。
 逃げないと……と思うけど、もう腰が痺れて、膝が笑ってて…逃げられないとこまで、持ってこられてしまった。
 やるんなら早くして。そう思ってしまい、頭を振る。
「あ……早くイカ……せて…終わらせて」
 恥ずかしさを、屈辱感を堪えてそう言うと、高階クンは、スラックスのポケットから何やら出すと、輪ゴムを止めるようにおれのモノに何かを通し、器用にタマも潜らせた。それを見てカッと熱くなると同時に、寒気がした。
「高階クン……!」
 それから彼はシャツを乱暴にはだけ、そのシャツで後ろ手に拘束される。
「高……!」
「……ふ。やっぱ似合いますよねえ…かわいいですよ。赤城さん」
 それを見て満足げに微笑むと、更に天を目指して右手で撫でながらその回りを執拗に舐める。
 おれの根元に食い込むそれ。それは前彼が言ってた、赤く透明感のある、シリコンのリングだった。
「ヤ……外して、」
「金属とちゃうから、そない食い込むこともないから、怖ないですよ」
「そんな問題とちゃう……、外して、……」
「こんなかわいいのに?赤城さんのためにあるみたいに似合てますよ…?可愛くてムチャクチャエロチック…こうしてると、赤城さんが…赤城さんのこれが、オレだけのモンみたいな気がして、めっちゃ嬉しいわ…」
「は、外せ、おれのソコは、君のもんちゃう、」
 すると今までのうっとりしたような声と打って変わり、低く抑えたような声で、
「そんなん、分かってますよ……」
「あ……っ、早くイカせて…」
 仕事が。原田が。おれは焦り、彼に向かって腰を揺らした。
「そないねだられると…悪い気しませんね。赤城さんがおれにねだってくれる…夢みたいや」
「いいから、早く、」
「しゃーないですね」
 彼はそう言うと、充分熱を持っている自分のモノを取り出した。
「まだ仕事あるから、中出ししたら可哀想ですしね…原田さんにも、」
 そして器用にポケットから小袋を出すと、片手で腰を抱いたまま、唇で封を切り、中のモノを手早く装着し、おれの腰を押し当てた。潤滑剤のぬめる感触のあとに、ぐっと入ってくる。
「あ……、」
 さっきのでほぐされ、潤滑剤の力を借りて、じわじわと熱い圧迫感がせりあがってくる。
 熱い。多分全て埋め込んだのだろう、彼がほーっと長く息をつく。しかし彼はおれの腰を強く抱き寄せたままで、動かない。
「早く……」
 彼は腰を掴み、ゆるゆると揺らす。じんわりとした快感が、広がっていく。でも、こんなんじゃ…もっと強くして欲しい。早く終わって欲しいのに。彼の唇が、むきだしの乳首を吸う。そして舌先で円を描くように舐める。
 熱い溜息が零れていく。
「あ……っ、もっと強く……」
 つい、胸も差し出すように押しつけた。
「もっともっと、て…色っぽすぎますね…でもおれはこんな夢みたいな時間、早う終わらせる気はないし…だからアレも噛ませたし、早うイキたかったらどうしたらええか…分かりますよね?」
「だからもっと強くして…」
「そんなに人に頼ってんと……ね?」
 カッとなる。彼は意地悪くニヤニヤとおれを見上げる。
 おれがイカせないとだめなんだ…彼はぬるく長くする気だ。おれが自分でイキ、イカせないと……。身体にくすぶる快感を引き上げるために、目を伏せ唇を噛むと、おれは腰を揺らしはじめた。
 どんどん息が上がる。肌が火照る。そんなおれを強く抱く高階クン。感じるほどに震え、硬くなり、それに噛みつき抑止する感触が強くなる。
 もう少し…、と少し息を収めようとしたとき、肌を貪っていた彼の唇が、おれの唇を塞いだ。絡みつく舌が蹂躙する。何かが脳裏でスパークする。と、彼はおれの両足の膝裏を抱え、足と身体を一緒に抱き寄せると、強く揺らし、突いてきた。
「あっ、あっあっ……」
 堪えきれず声が零れていく。
「勿体ない、」
 そう言うとずるっと抜く。余りの快感に、震える。おれが出しそうだと思ったのかさっとぬるむそれを掴み、抑えると、また一気に貫いてくる。感触が違う。生で入れたのだ。
「折角やのに…な」
 自分に言い聞かすように呟く。彼とおれのくぐもった熱い吐息。狭い密室に籠もる熱気。回りの何も感じ取れない気の遠くなるような快感の中、彼はまたおれを抑え、一気に抜くと器用に便器に吐き出した。
「あ……っ」
 淫らに悶えるおれのものを口に含むと、手を離し腰を掴み、強く吸い上げる。
「ああ……っ!」
 彼の中に吸い込まれていく。めくるめく心地よさ。
 何も考えられない痺れきった身体と頭を暫くそのままに、どうにか思考が戻ってくると、余りの浅ましい行為に、胸の塞がるような後悔が襲ってきた。
「……高階クン、どういうつもり……、早く、これ、」
 おれは後ろ手にされた手を振る。がくがくする腰をムリヤリに浮かし彼の膝の上から逃れる。すると彼もおれをまたひっくり返し、拘束を解いた。そして、そのまま手をそろそろと下腹へと伝わせる。
 そっと、リングを抜かれる。濡れたリングを舐めながら、
「これは、赤城さん専用ですから、……閉まっときますね」
と言う。
「どういうつもり…?原田に悪いと思わへんの?」
「赤城さんこそ。…これは赤城さんと原田さんへのお礼ですよ」
「何?」
「昨日からおれを刺激するだけ刺激して。あんたは原田さんと土井さんにいいようにされておれに見せつけて。おれにはあかんと……その報復ですよ」
「バ……そもそもあれは、君が痴漢するからやんか、」
「でもあんな見せつけんでもええでしょ。……原田さんも野々垣さんとキスしてたことやし、おれとこうしても五分五分やろ?」
「そんな屁理屈が通るか……!全然五分ちゃうわ、あんた、クビになっても知らんで、」
 すると彼はおれを冷たく一瞥し、口を開く。
「……言えるんですか?それって原田さんに言うってことですよね。言えるんですか?こんなん言うたら、怒るくらいじゃ済まへんと思うけど?藪をつついて、昔のこともボロが出ぇへんとも限らへんし」
 おれはぐっと詰まる。
「それにしても……、土井さんは、抱き締めて撫で回したくらいやったのに、」
 自分の身を整えながら彼を睨む。いつの間にかズボンも下着も脱がされていた。
 つまりおれは、真っ昼間の事務所の入ってるトイレで、かなりあられもない格好させられていたワケだ。
「やっぱやられてるやん…アブナイところやん。…おれは別に、言うてもらってもええんですよ。昔のこともね。それであんたらが別れてくれたら儲けモンやし。でもあなたはバレたくないでしょ?あなたに一任します……」
「こんなことしておいて、一任やて……!自分がどんだけムチャクチャ言うてるか、分かってんの?」
「早よ仕事しやなあきませんのちゃう?せやからあんなに焦って終わらしたのに。……原田さんも待ってますよ」
 ゾッとする。背筋を言いようのない恐怖が這い上る。
 でも早くここを出たい。彼と2人は、堪えられない。シャツのボタンを留め終えると、封筒を拾って鍵に手をかけた。
「あ、赤城さん。これ……」
 振り向くと、携帯のモニタを差し出す。全身から力が抜けて目の前が暗くなった。
 おれの画像が、裸で足を開いた画像が収められていた。
 快感に眩んでいる間に、撮られてしまっていたようだった。あのテープどころじゃない弱点を、握られてしまった自分に嫌気がさした。
「……消して」
 そう吐き捨てると、おれは振り返らず出てった。

昨日にも更新のつもりだったのですが、久々に本格エロは異常にしんどかったです…上手く文にできなくて~。しかしエライ展開になってきましたね(人ごと)。今回のメインは、赤いシリコンリングです。皆さん想像してやって下さい……可愛いですね。
リクのお題は、「本格的な2人の浮気、絡み場面」でした。番外とかにすると、また夢オチで逃げそうだったので、本編でやってみました…

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