ブレイクスルー 3 -5-

 夜中の二時近くになって、ピンポンとベルが鳴る。まだ起きてたおれは、即座に立ち、ドアを開ける。
「遅い、」
と開けて見ると、高階クンがニヤニヤして、寝てる原田を支えてる。彼から原田を任される。
「重いわ…、なんでこんなに、酔うてん、」
「原田さんてホントに、弱いですよね」
と笑みを含み、高階クンが言う。何かムカつく。
「酔わして襲うつもりやってんやろ、」
「だったらどーします?」
 おれは原田を抱いたまま、睨む。
「早く帰ったら?」
 すると、彼は複雑な笑みを漏らす。
「あちこち送ってったから、遅くなったんですよ。…原田さん、泊まってけって、言ったんですけどね」
「そんなこと、言うたん?」
と言えば、
「ええやん……。早く、布団に連れてって」
 そして靴脱ぎに仰向けに寝て、
「脱がしてー」
 手が焼けるなあ……。おれは足を一発叩き、靴を脱がせる。
 高階クンは、ニヤニヤしてそんなおれたちを見てる。
「フロも入らへん?」
「朝点てて。もー、今すぐ寝ようや」
 おれはまだ玄関に立ってる高階クンを見た。
「入ったら?……布団の用意、するから」
「じゃ、お邪魔します」
「君あんまり酔ってへんねんな」
 愚問だった。こいつは、ザルだ。
 原田を促し、奥の六畳間の布団まで連れてくと、すぐ転がりそうになるのをちょっと壁にもたれさせて座らせ、シーツを剥いで布団をばらす。
 丸めたティッシュが、どこからともなく転がり出た。おれは顔が熱くなる。
 高階クンはくすくす笑ってる。
 即座にポイと捨て、高階クン用の寝床をおれたちの布団の横にしつらえる。なんで布団をばらすのかというと、元々持ってた綿の和の組布団の、掛け布団を敷きに使ってるからである。何年か前に掛けは羽毛を買ったので、重たい掛け布団が余った。それを敷きに重ねてる。敷き布団より掛け布団の幅の方が広いので、広い分は折り返して段差のつかないようにしている。これで敷きの広さは、セミダブルくらい。二人で寝ても充分な広さが確保できているという訳。でもこれは、独り寝のときからこうなので、念のため。
「頼むで横でHせんといて下さいよ…」
とネクタイを解きながら高階クンが言う。
「だってよ。原田」
と振り返れば、原田ははって布団に横になる。
「もう、」
 おれは仰向けの彼の服を脱がす。上着だけ。
「高階クン、パジャマいらん?」
「いいですよ。別に」
と、振り向けば彼はもうトランクスだけになってた。おれは、こんなことになると思ってなかったから、着替えないと、…押入から何時着たか思い出せないようなパジャマを出し、四畳半へ行って、六畳間との間の襖を閉めた。シャツのボタンを外していると、襖が開いた。振り向くと、高階クンが笑っておれを見てた。
「トイレ、こっちですね……」
と、トイレに通じる廊下の襖を指す。おれは頷く。
 彼から顔を外した途端、抱きつかれボタンの外れた肩口に顔を埋められる。
「高階クン、」
「いい匂い、するわ……」
 そして顔を上げ、彼はトイレへ行った。
 おれはさっさと着替えて布団へ行った。原田の横に潜り込むと、抱き寄せる。
「ダメやって。……酒くさー」
「キスだけ、してよ…」
 おれは彼の頭を抱え、口づける。
 そうしてると、トイレのドアがバタンと開く音がする。慌てて唇を離した。
「おやすみなさい」
 高階クンはそう行って素直に横になった。おれは立ち上がって電気を消す。
「原田。もう寝た……?」
「ん?」
「話がな、ようけたまってんねん。明日のお昼は、二人にしてよ」
「アホかお前。明日から、GWやぞ。なんぼでも出来るやん」
「……」
 忘れてた。向こうを向いて寝てる高階クンがくっくっと笑う。
 Hはしないが、暗闇の布団の中、原田はおれの腰に手を回し、おれは頭を預けて、足をからめて寝る。
「赤城さん、」
と翌朝おれはホッペタをつっつかれて目が覚めた。高階クンが、服を着込んで立っていた。
「おれ、帰りますんで、じゃ」
「ああ、……土産、頼むわ」
 そして横の原田を揺する。
「高階クン、帰るって」
「ああ、バイバイ」
 原田は目を閉じたまま、手だけ振る。おれは立って、ドアを開けてやる。高階クンは靴を履き、玄関に立ち、でも去りがたいように、笑みを向けている。
「旅行、行ってらっしゃい……」
と目を向ければ、彼はうなずき、
「赤城さんも、気を付けて」
「飛行機乗んのやろ。気を付けろよ」
 おれは、飛行機は大嫌いだ。
「いや、フェリーで行くねん。車ある方が便利やろ」
「カッコイイな……。おれもそういう旅行したいわ」
「おれはさしたるで。考えや」
「一応ね」
 彼が手を振り出ていくと、おれはドアを閉め鍵をかけた。
 おれたちの出かける待ち合わせ時間は、お昼の一時、うち。
 布団へとって返すと、当然のようにグーグー寝てた。
「原田……」
と、少し無精ヒゲのざらつく、ホントに忙しかったのだ。そのせいで、やつれてすら見える。とにかく、彼の顔をなでる。
 彼の手が、おれの首を引き寄せる。お目覚めのキスである。腰を抱かれ、彼の上に重なる。
 彼の胸に頭を預け、
「あのね、……五月三日、予定ある?」
と、昨日言うつもりだった話をする。
「何で……」
 子供のように抱かれながら、
「友達に子供が出来たって、言うたでしょ…一緒に、お祝いに行かへん?」
「おれも?」
「一生の友達やから、お前にも会わせとこうと思って…。で、言おうと思って」
「いいよ……」
と口づけられる。
 彼がおれのでこをなで回し、前髪をくしゃくしゃにして払うと、そこに口づける。
「友達って、学生のときの……?確か一緒に住んでたとかいう奴が居たような、」
 今度は左手を背中に回し、パジャマの前を外して右手を侵入させる。肩や、胸をなでられる。
「そう。そいつ…」
「そいつとは、何もナシ……?」
 おれは下に仰向けにされ、首筋に舌を這わされる。
「結婚して子供出来てるような普通の奴やで……何も、ナシ」
 完全にボタンを外され、愛撫を受けながら、おれも彼に手を這わす。
「信じられへん。…ま、何かあったら、こうしてへんかもな」
 彼が、おれのをいじる。もう身体がゾクゾクと疼いてきた。
「ア……」
と喉をのけぞらせる。
 彼が、侵入してくる。動きに合わせて、堪えきれず、
「あん、あん、」
と声を漏らしてしまう。あの動きが、衝撃が、出る声を「あん」と詰まらせてしまうのだ。おれがわざわざそんな可愛い声を出しているワケがない。
 緊張の後に、ジーンとした痺れが倦怠感と共に襲い来たり、ぐにゃぐにゃの火照る身体をぐったりと重ね合う。
「おやすみ」
と彼は肩に顔を埋めて……
「また。早く抜いてよ」
 背中を両手で抱き締められる。
「三日の晩は、おれんち行かへん?」
「お前全然家に帰ってへんもんな…」
「そ。田舎にオヤジとオカン行くらしい。道隆(弟クン)は生意気に女とどっか行くらしいし、一晩だけ留守番して欲しいらしい。土産買ってくるからって言われてさ、」
「顔見たいんやろ、お母さん。親不孝だな、お前」
「お互い様。お前なんか、正月も帰らなかったくせ、」
 それからゆっくりフロを使い、用意をしていると、達っちゃん、林田達彦君がやってきた。
「久しぶり、元気にしてた?」
と訊けば、笑って、
「昨日もめいっぱい残業やで。……疲れたよ。原田は?」
「寝てる」
と後ろを指さす。彼は奥を見、少し苦く笑うと、
「ヤリ過ぎちゃうか」
「違うって……!原田、昨日飲んで二時に帰ってきてん。ずっと遅くて、疲れてるし」
 四畳半の、もう布団を外したこたつに座って貰い、コーヒーを出す。
「お前ら、続くな」
 おれを見て感心したように言う。
「うん。……飽きひん」
「好き者同士やもんな」
 おれは赤くなったと思う。
 彼が、おれの元カレ。
 彼とは今から思い出しても、とっても普通な彼にピッタリなとってもカワイイお付き合いをしていたのだけど、そこへ強引に割って入ってきたのが、原田だった。それはもう、高階クンも目じゃないほどに……。
 しかし後で聞いた話では、おれが彼と付き合いだした頃には原田のヤツも腹をくくっておれに告白するつもりではあったらしいので、出鼻を挫かれたようなものなだけだったらしいが、彼との別れはなかなか凄まじい展開になってしまった。一時期は一生許して貰えない、もう一生会ってくれないだろうと覚悟をしたものだが、彼は本当におれを諦めきれたらしい。
 しかし、最初の頃の原田は、ホントにとんでもないことを沢山しでかしてくれたよな。ヤツとのファーストキスだって…今だって信じらんねー。
 原田は渋々起きてくると、達っちゃんの横に座る。
「達っちゃん、赤口説いてへんやろな。元気そうやん」
「原田は何かやつれたな」
と言われて彼は、頬やあごをさすり、
「何せおれはホレ、チーフやから。ヒラの君たちと違って」
「相変わらずイヤミやな」
 達っちゃんは、おれたちが出会って、そして辞めた会社に今もいる。ここにいる三人は、今は別 の、でも近場の会社にそれぞれいる。やってることは、皆同じ。
「なー。おれもいつもムカついてんねん」
とおれが言えば、
「なあ」
 達っちゃんが口元をゆがめておれを見る。
 一時は原田を「大ッ嫌いだ」とまで言い放った達っちゃんが、原田の横で、笑ってる……。
 夢のような、構図である。
 まあ実は知らされてなかったが(今までの礼にワザと教えてくれなかったらしい)、この頃にはもう彼はおれの前の職場の劉さんと付き合ってラブラブなところだったらしいのだから、おれも余計な心配をさせられていたということになる。
 暫くたあいもない話をしていると、他の二人もやって来た。
「おー、いるいる。まだ二人でおるで」
 その内の一人、吉田が感心したように言う。
 原田はタバコをくゆらしながら、
「吉田。お前は来んでええ言うたのに、何で来んねん」
「長い付き合いやんか。そんな冷たいこと言わんでくれよ」
と言って、「ハイ」と包みをくれた。
「何これ」
 くわえタバコで手に持ち言う原田。
 そして開けると、お揃いの歯ブラシ、お箸、カミソリなんかの消耗品が入ってた。
「減るの早いやろ。二人やと」
 おれたち二人の関係をバラしたとき、一人盛大に気色悪がってくれた彼だが、こういう気の回るところもあるヤツなのだ。知らなかった。
「ありがと。やっぱお前は、いい友達や」
と原田は笑って礼を言った。
 それから原田の車と、吉田の車に分乗して、キャンプへ。
 キャンプ中は、おれも原田もいちゃつかず、色気を出さなかった。
 長い付き合いの友達の中だと、どうもおれと原田もただのダチに戻ってしまうようである。


 そして前半の連休は去り、まるで夏休み中の登校日のような気分で、月曜は仕事。
 潮崎さんは、真っ黒に日焼けしていた。
「……どこの人?」
とおれが訊けば、曽根さんが、
「インド人みたいやろ。黙っとったら」
と笑って言う。曽根さんは、おれと同じ肌のタチらしく、多少黒くはなったものの、どっちかというと赤くなってる。それが引いたら、元に比べれば黒いものの、他人に混ざれば白い、きめ細かな肌に見えるんだろう。髪も、フワッと真っ黒じゃない。一つ上のはずだが、潮崎さんの方が上に見える。
 はっきり言って、おれはおれよりこの曽根さんの方がよっぽどカワイイと思うんだが…。潮崎さんは、曽根さんはどうも思わないのかな。
 潮崎さんは沈着しやすいタチらしく、黒光り。男っぽい。
「面白かったで。春スキー」
と、二人してあったことを話して聞かせてくれる。
「初めて行ったけど、良かったな」
 彼が曽根さんを振り返れば、曽根さんが頷く。
「でも、潮崎はダメやな。ナンパばっかりしてたから」
と後ろから唯野さんが口を挟む。
「そんなことないやろ、滑ってたやん、おれ」
「いや、潮崎さん、ふっと見ると居なくなってて、唯野さんとどこかなーと思って探すと、絶対女としゃべってましたよ」
「うまくひっかかりました?」
と訊けば、
「ぜんぜん」
「やっぱやってるんやないですか」
と突っ込む。
「赤が居たら、女寄ってくるだろうになー」
 潮崎さんが言う。
「潮崎さん、充分もてるでしょ」
 おれがそう言うと曽根さんが、
「いや潮崎さんは、なんかギラギラしてて、やらしいからあかんって」
「だから違うって。勝手におれのイメージ作りなや」
 ところでこの日、おれは初めて知ったのだ。
 ストレートロング吉川さんが、
「赤城さんてホントカッコイイですねー」
と挨拶のように言うから、
「でも誰もおれにモーションかけてけーへんで」
と言えば、
「それは、奥さんがいてるから。皆それで、考えへんの。分かるでしょ」
と。女とは、計算高い生き物なのだ。割り切りのいい生き物なのだ。
それで、指輪があっても、彼氏がいてもせまってくるのは衝動的動物の男だけなのか。


 五月三日は、もうすっかりいい陽気。おれは白いTシャツに、紺のカーディガンに、ストレートジーンズ、原田は、白いシャツに、ジーンズに、黒いニットの薄手のジャケットを羽織る。
「いらっしゃい」
と友達、菅野はおれと原田を迎えてくれた。マンションの一室。きれいな1LDK。
 パッチワークやら、キルトのパステルカラーに彩られた女らしい華やかな室内。奥さんは赤ちゃんを見ていたが、すぐに立って挨拶したあとお茶を入れてくれている。
「物がいいかなとも思てんけど、これ」
とおれは封筒を差し出す。
「そんな……スマンな」
 彼は封筒を収める。
 暫く四人で話した後、奥さんは赤ちゃんが泣くので、あやす。
「赤も、抱いてみてよ」
とビールを舐めながら原田が言う。
「冗談。おれ怖いよ」
 まだ首の座ってない見るからにふにゃふにゃの、壊れそうな赤ちゃんだぞ。
「怖いことないって。ちょっと抱かして貰ってもいい?」
 原田は奥さんから赤ちゃんを譲り受ける。嬉しそう。なんか抱き馴れてる。
「なんか、父親みたい」
とおれが言えば、おれを見て、
「兄貴のガキ、随分押しつけられたからな」
 そしておれに渡す。赤ちゃんは、抱き方がある。頭が座ってないから、肘で支えてやらないといけないと、初めて知った。全く骨を感じない位 柔らかくって、温かくて、小さくて、可愛い生き物。
 ふと原田を見ると、頬杖付いて、包み込むように見てる。眩しいものを、見るように。
 コイツ、おれにガキ作れって、言い出しそう……
「似合ってるで、赤」
 菅野も言う。
「じょーだん。オレ、ガキ、苦手……」
 奥さんに返すと、奥さんは寝かせて、あやす。原田も覗いて、ほっぺをつついたり、赤ちゃんで遊んでる。
 おれは切り出した。テーブルに残ってる、菅野に。
「あのな、……おれ、な……」
「うん?」
「変わった?」
「変わったといや、変わったかな。楽しそうというか、前より若くなったというか、」
「おれはそんなにフケとったんかよ…、ま、おれも自分でもそう思うけどさ。……彼のおかげ、やねん。…で、おれたち、一生の友達やんな」
「そうやで。お前には、随分甘えさせて貰たからな。何か困ったことあったら、いつでも言うてや」
「ん……。あのな、おれ、これ……」
と左手を差し出す。
「あれ?いつの間に、結婚したん?それとも彼女出来ただけ?」
 おれは首を振り、
「彼と、……おれ、そういうヤツやねん」
 菅野は赤ちゃんと遊んでる原田を振り返る。
「そら、また…冗談……ではなさそうやな。……そっか、何か、男にこんなこと言ったらどうかと思とってんけど、きれいになったもんな、お前」
「そう?」
と目を上げる。
「うん。……おれも、ちょっとはお前のこと、そーいう風に見とったで。一緒に住んでる時。気分だけは、彼女の気分で」
「やっぱり……」
「でも、あの頃のお前は、大人やったよな」
「それは違う。暗くて、冷めてただけ」
 そう言っておれが俯くと、彼は
「いいよ。分かるよ。……いい付き合い、してるやろ」
「うん。……これからも、友達でいてくれな」
「ホントにきれいになったよなー。……惜しかったかな」
とおれをじっと見て言う。
「バカなこと言うな。おれは子供、作られへんで」
「そうだな」
 彼は笑った。
「可愛かったなー」
 電車の中で、ドア際に立って車窓の景色を見ながら原田が言う。しみじみと。
「ガキが欲しけりゃ、よそへどうぞ」
「カワイないな……ただ可愛かったって、言うてるだけやん」
「でもお前、スゲー似合ってたぜ。ガキ。言っておくけど、オレ、ガキは作られへんから、」
「何拗ねてんねん、お前。そやったら連れてけえへんかったら良かったやろ?」
「ああおれもちょっと後悔してるよ」
 そりゃ赤ちゃんは可愛かったけどさ、温かそうな家庭が眩しく幸せそうでいいなって思ったけど。
 ちょっとあの原田の姿は忘れられそうにない。
 それから殆ど無言で、原田の家、某巨大都市整備公団団地に行く。おれがここへ来るのは、年末以来だが、もしかすると原田もそうかも知れない。
 原田が鍵を開けると、道隆クンはまだ居た。
 原田の弟、道隆クンは大学生。ちょっと賢い大学の学生である。
「何しに来てん」
 彼が言う。
「寝に来た」
「オフクロ達、おれへんで」
「いーのいーの。留守番やから」
 真っ直ぐ四畳半の原田の部屋へ行くと、おれはすぐに覆い被さられ、頭を抱いて口づけられる。
「な……、」
「そんなに拗ねなや。ムラムラするやろ」
 電車の中で、無言でおれを不機嫌そうに見ていたと思ったら、ムラムラ欲情していたのか、コイツは。
 濃く、激し口づけていると、ドアが開いた。
 びっくりしてドアの方を二人して見ると、道隆クンがボーゼンと立っていた。
「何だよ、お前ー」
「現場見ると、さすがにびびるな」
「早く行けよ、何か用か?」
 すると道隆クンは手を出し、
「小遣いちょーだい」
「あほう。誰がやるか。早う行け」
「じゃ、ずっとここに居る」
「おったらええやん。おれら、ヤルで」
「やだ……!」
 おれが言うのも構わず、原田は首筋に舌を這わし、Tシャツの裾から手を差し込む。
「やだー。兄貴、ロシュツ狂」
「早く行けー。ってんだよ。あほう」
 道隆クンは小遣いをせびり出すのはムリと踏んだか、ヘエヘエと言って出て行った。
「全く……!」
と原田はドアを睨む。でも、なんか憎めないいい兄弟だ。
 それから陽光の中、情事にふける。
 ふと、恥ずかしくなって声をおさめる。道隆クン、聞こえてやしないかな。もう出てったかな。でも遅いか。それに、どうしたって少しは漏れる。
 しかし後に聞いた話では、道隆クンはのぞいていたそうである。
 おれが予想以上に色っぽかったので、気色悪くなってやめるだろうと思っていたが、一回終わるまで見たという…原田に、そう言ったとき、殴られたそうである。殴るくらいならちゃんと鍵締めとけよ、バカ。
 つくづくあんまりヘンなことしなくて良かった。フツーに入れられただけで良かった。服も、おれは全裸に剥かれちゃったけどー、ヤツだけでも脱いでなくて良かった。でも、やさぐれるなー。

ふぁー。この部分はある主要エピソードをごっそりカットしたので、どうしても活かしたい部分を活かしたいように辻褄合うようにつぎはぎ、再構築。せっかくの原田君の出番だつーのに、結構気に入ったセリフもあったり、赤城君が仮性だとかw…カット部分では赤城君のやきもちなんかもあったりしたのですけどね。でも悔いナシ。
しかしオメーラ楽しそうだな。オレなんか…

(ここから再開整理後追加)
10年の時を経て、若干加筆修正。我ながら元エピを忘れきってて興味が沸いてノート見たら使えそうな原田とのやりとりがあったので。削りすぎだわ。

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