悪魔に抱かれて -2-

 仕事中、打ち合わせテーブルで説明を受け、終わって原稿を持って自分の席へ戻ろうとしていたら、
「赤城サン」
と呼び止められたのだ。憮然として振り向くと、にこにこしながら彼が立っていた。
「ああ、……高階クン、お久しぶり。何してんの」
「仕事貰いに来たんです。まさかここに居たとは思えへんかったわ。狭いよな、このギョーカイ」
「君のとこから十分もかからへんからな」
「来る楽しみ増えたわ…それにしても赤城さん、ブッキラボーいうか、クールですね」
「そう?仕事中だもの…。おれ一人の時は、こんな感じよ」
 その時うちの営業が高階クンを呼んだので、おれは自分の席へ戻った。
 その途端、今の主任が、
「赤城君顔広いな」
と感心して言う。
「友達の会社の子ですよ」
と答えて、仕事にかかる。
 と、仕事をしていると、スーツのヤツが隣に立った。見上げるまでもない。高階クンだ。
「もう話終わったん?」
「もう帰ります。……うちとは、違うの使ってるんですね……」
と機械を顔を寄せて見る。
「ここ、しょっちゅう来てんの?」
「いや、初めて。これからも宜しく、赤城さんからも言っといて下さいよ」
「おれは新入社員の分際だからそんな出過ぎた真似はできないよ」
と仕事の手を休めず答えていると、高階クンは肩に手をかけ、耳元に口を寄せ、
「赤城さん……おれ明日休みなんです。原田さんは出でしょ。明日……どうです?」
と言う。ゾク…とする。
「高階クン…もう、せえへんつもりちゃうかったん?後悔してるんちゃう?」
「おれそんなこといいました?じゃ……」
「あ、高階クン、」
 彼はもう去りかけていて、ニコニコと人なつっこい笑顔で手を振った。
 どういうつもりなんだ……
 それはあの夜から、二ヶ月後位の、金曜の出来事だった。
 おれの都合も聞かずに……でも原田から聞いて、もう知っているんだろうか。明日、おれは休みと。
 ゾクリ、とする。まるで、悪魔に魅入られたようだ。
 それが気がかりで、家に帰ってもおれは沈みがちだった。原田はそんなおれをいぶかしむ。
「赤。何かあったん?ド暗い顔して」
「うん……仕事のこと」
「何。また寝て怒られた?それとも失敗した?」
 ニヤニヤして言う。何も知らないから気楽だな…とムカツク。でも、言ったらエライことになる。
 次の日、おれは心配でやたらと早く目覚めた。勿論、原田はもう出かけちゃった後だったけど。
 高階クンには悪いけど、来ないうちにどっか行っちゃおう……と思いつつ、ドアを開けて新聞を取り込もうとすると、ニコニコして高階クンが立っていた。おれは唖然とした……低血圧じゃ、なかったのか。
「おそーい、赤城さん」
「エ?」
「ベルの音で、出てきたんちゃうかったん?」
「……」
 じゃ、おれが目覚めたのは、ベルの音で……?
「いいや。今目が覚めたばっかり」
「寝坊ですね。いい天気ですよ、赤城さん」
 ニコニコしながら入ろうとする。おれは彼を掴み、
「高階クン、困るよ、」
と顔をしかめながら言うと、抱き締めキスしようとする。おれはとっさに顔を背けた。
「どういうつもり……?おれはもう、したないで」
「おれもう一回はしたいんで。ね、一回だけですから、だっておれ、赤城さんのこと気に入ってるから、」
 心が重くなる。
「二回やるヤツって、多いの……?君の歴史の中で」
「二回は、少ないかな。でないと百人は、なかなか…ね」
「二回やったヤツって、そこで止まるの……?」
「あきて止まるヤツもおるし……。でも、三、四回で、飽きますよ。心配しなくても」
 平然と言う。力を込めて抱き締められる。怖い。
「二回で止まるヤツって、どんな……?」
「んー、圧倒されて、食傷気味になるようなヤツかな?」
 難しい注文。だけど、おれだって拒否権はあるんだぞ。
「高階クン…悪いけど、帰って。来て貰って悪いけど、おれ昨日うんと言ってないし、」
「おれ嫌われた?」
「いや、そーいう訳じゃ……でも、する気だろ?」
「鬼の居ぬ間に、ね。でもえー天気やし、取りあえず外出ましょうよ」
「おれ、全然する気ない。もう、充分……はっきり言って、君、怖いよ…」
「そない怖がらんと。前はあんなにノリが良かったくせ、」
「おれ思いっきり後悔してんねん。これ以上、落ち込みたくない」
と言えば、暫く黙り、じっと肩を抱いたまま彼は佇んでいた。
「……ま、いいか……。でも赤城さん、ドライブくらいは、しましょうよ。折角来たんやし。その誤解を取り去りたいし、」
「誤解?」
「おれ、怖ないよぉ」
「いや、おれに君は理解できひんから…付いていけないよ」
「原田さんは理解できんのに?」
「だって、愛し合ってるもん」
「それは、……また、ごっそーさん」
 おれは彼から解放されると、顔を洗った。その間、高階クンはテレビを見て笑っていた。
「ドライブったって…どこ行く気?」
「んー。どこがいいです赤城さん」
「さあ?…あんまり、」
「海方面?」
「そっちは原田と行きまくってる」
「うち来ません?」
「ストレートな…行かん」
「まーぼちぼち考えましょ。出てから」
 彼は濃いダンガリーのシャツにストレートジーンズ。気が進まなかったが、買ったばかりのクリームのセーターに水色のチェックのシャツに、白いストレートジーンズをはいて…モチロン、下着も。
「しゃーないな。君に出てもらうためには、出なあかんのやろ?」
と柱に手をつき、彼を見下ろすと、彼は嬉しそうに笑う。悪かったかな…疑いすぎて。でも、とてつもなく不安なんだけど。
「キレ…、」
「それは、禁句」
 車に乗っても、やたら不安なばかりで、ソワソワする。でも高階クンは楽しそうにしゃべりかけてくる。ウチを出て街の方へ車を走らせる。もう十二時半だ……。
「おれ早く帰るで」
「密会ですからね」
「止めて!降りる、ここで…」
 すると、少し困った顔をして、おれを見つめ、
「そんなに神経質にならないで。……ね、赤城サン」
と言う。おれは顔を反らす。
「競馬しません?」
 彼が言う。
「したことない」
「どんなとこ、好きですか?気、晴れます……?」
 なんか、さすがに可哀想になってくる……気を遣ってるんだ。
「ハラ減ってきたな」
 おれが言うと、
「この辺やったら…、いいとこ知ってます」
と彼が連れて行ってくれた店は、美味しいイタめしだった(※時代を感じますね)。  おれは少しにやにやしながら、
「今時イタめし。ふっるー」
と言えば、彼は憮然として、
「おれは流行る前からイタリアン好きやったんです」
と言う。
「おれも。エスニック、中華、イタリアンは好きだな。…「あ○ふぁ」、知ってる?」
「知ってますよ、美味いもん」
「おれ、ジェノヴァ・ペーストが好きでね…皆味がくどいって言うけど。あと、アンチョビーとツナのトマトソース」
「おれもジェノヴァ・ペーストは分かれへんケド、アンチョビーはええわ、やみつき」
 嬉しくなって笑いかけると、彼も笑った。
 食べて少し気が晴れて、また暫く車を走らせていると、彼は道ばたで止め、
「赤城さん、ちょっとここで待ってて下さい」
と言う。なんかやな予感。時計を見ると、二時前。
「高階クン、」
 彼はハンドルに両手をかけ、にこにこと、
「お願い。何も怖がるようなこと、起こらへんから……」
「もうおれは、知らんで」
 でも彼はにこにこしたまま。おれは降りた。
 暫くそこで待っていると、思った通り、鍵を玩びながら歩いて来る。
 はめられた。やっぱりやられた。
「ここ、あんたの……」
 後には白亜のマンションがそびえてる。
「長引かせないで…。ヘタすると、横取りしたくなっちゃいますよ。オレ」
「だめだ、帰る、」
「全部言いますよ、オレ」
とおれの目を見る。
「怒りますよ。きっと……」
「酔った勢いだもの、」
「じらさないで。赤城さん。パッとやっちゃえば、済むことなんですよ。……そんなに怖れずに。おれはあんたのセックスに興味があるんだ、あんた自身じゃない。でもこうやって長引かせて、知り合えば、欲しくなるかも、知らんでしょう……」
 ゾクリ、としながらも、吹っ切れないまま、おれは彼の部屋まで入ってしまった。明るく窓の広い、フローリングの広めのワンルーム。シンプルに、いかにも彼らしく片づいている。黒いスチールのベッドに、白いリネンの布団。
 まだ怖い。だめだ。怖い。
 彼が冷蔵庫からビールを出す。なんか音楽をかけてる。
「高階クン、おれ……、」
と、振り向くおれに、ビールを手渡す。おれは情けない顔してると思う。一口飲むと、おれの頭を抱え、キスされた。侵入してくる舌を拒みはしなかったが、萎縮して、応えられない。
「おびえて、ますね……」
「分かるんなら、帰してくれ」
「どうせ嫌われるんなら……襲っても、やりますよ」
 背筋が、熱いのにゾクゾクっとする。
「忘れたのか、おれは男だぜ、」
「でも今震えてるでしょ。力入ります?……」
と、足を払われ、ベッドへもつれ込んだ。
 キスされる。おれは彼の腕を掴み、目一杯抵抗する。
「何でなんだ、もう、」
 格闘しながら口走る。彼も押さえ込もうと必死になりながら、
「したいから。頼むから抵抗しないで」
と、鳩尾を殴られた。
「つ……」
 おれは苦痛に顔を歪ませ、腹を押さえた。その間にジーンズを脱がされ、舌を這わされる。神経が立っているので、その瞬間から感じ始める。
「高……階……君……」
 もうだめだ。あきらめよう。おれは力を抜いた。
「高階クン。…負けたわ、好きにして」
 彼は、下を、靴下まで手際よく脱がせ切り、準備よくローションを塗り込むと、すぐにおれの中に入ってきた。そしてゆるく腰を動かしながら、セーターを、シャツを脱がせていく。そして口づけられて……落ち着いたのか、ゆったりとしている。まだ応えることはできないけど、高階クンは舌を絡め続ける。
「赤城サン…」
 熱く呼ばれる。
「やっぱりいいわ…色っぽい……ゾクゾクする……愛してる、赤城サン」
 熱い身体で、荒く息をしながら言われる。おれも粟立つような感覚を覚える。乳首を指でいじられ、おれの息が乱れてくる。感じたくはないのに、簡単に感じてしまうこの身がのろわしい。
「もっと、声を聞かせて…よ。おれの好きな、あんたの声を」
「アッ……困るわ、おれ……」
「悪いのは赤城さんなんやで……。おれは明るく、さっぱりと、もう一回存分にやって、きれいに終わろう思たのに、焦らし続けるから……引っ込みがつかんように、なってもた……」
「怖いわ、君」
「そうやっておびえるから、本気になってまうんですよ、赤城さん、」
「怖いこと言うなや……今、だけ、…やろ…?」
「今だけはね。取りあえず。物凄く、あんたのこと、愛してる……のぼせてる」
 うっ、と彼が呻く。体内に衝撃を感じる。
 少し息を収めて、笑顔を取り戻すと、身体を繋げたまま、彼はおれを見下ろしながら、
「こんなん初めてやわ…。おれも、怖なってきた」
と言う。おれは再び眉をしかめ、
「今なら間に合う。やめよう」
「そう思わんこともないけど、」
「だったら早く、最悪の事態にならんウチに、」
「訳分からんうちにセックス終わったん初めて……。いやだ。放したくない。折角の赤城サンを」
「泥沼にはまる、」
「いや、大丈夫……きっと、もうないわ。おれが、怖くてあんたによう手を出さん。そーいう気ィする」
「その口信用できひん、」
「おれ、二度と会わへん。会社へも、誰か他のヤツに行ってもらうわ。……やっぱり、あんたは、魔性の、ひと…」
「じょーだん言うな、」
「愛してる……愛してるわ、赤城さん」
 うわごとのように言うと、きつく抱き取られ、唇をふさがれる。そしてまた、じっくりと丹念に愛撫される。おれの息もまた荒くなる。
「人妻と、年若い愛人ごっこしよう思たのに、」
とまだ繰り言を漏らす。彼の口が、まるで味わうようにおれのを舐める。おれの反応を見ながらか、焦らすように執拗にやられるから、なかなか極められない。真っ昼間っから、家とは比べもんにならないくらい明るい部屋で、大きく足を広げられ、恥ずかしいことをされているから、おれは目をつむりっぱなしで彼の反応など知らん。しかし苦しい。こう焦らされては、自分から動きたくなる…充分喘がされ、身体が反応するのを止められはしないけど、それだけは、勘弁。
「苦しい……早く、どうにかして…」
「赤城さん、やらしいこと言うね…」
 彼が低く言う。その言葉が引き金のように、刺激する。再び彼が口を付けると、おれはむちゃくちゃ背をのけぞらせ、足の先まで強ばらせながら、イッた。そんなおれの放出物を、彼は飲み込んだ。
 彼がはい上がってくる気配がし、唇やその回りを舐められる。舌がそのまま侵入してき、貪られる。
 長い、長い口付けを交わすと、
「で……?」
と彼が問う。
「で……?何、それ……」
「次、どうしよう……。オレ、全部吹っ飛んでもーた……」
「じゃ、やめたら、」
「いや。放したない。……おれ、入れられて、キスできりゃ、もー充分……」
「キョーフのワンパ男に成り下がった?」
 すぐに口を塞がれ、入れられ揺すられる。彼を抱き寄せながら、
「今日は、言わへんの?いい感じ、って」
「感じどころやあれへん。イイ。それだけ」
 耳元を愛撫しながら、小声で彼が言う。
「赤城さん……あんたを、愛し尽くしたい。あんたのこと、欲しい。全部、全部」
 その言葉に甘い疼きが走り、彼の背に回した手がピクリ、と震える。
「お前のこと、愛してる……!」
 おれも魂を抜かれそうになりながら、ここまで来たか……と思う。
 敬語のもどかしさを、彼は少しずつ振り払い、おれをものにしようとしてる。
「好きや……赤。て呼んでいい?赤城さん」
「今だけな」
「赤……赤」
 熱に浮かされたように、彼はおれの名を呼び続けた。


 二人とも、熱病患者のように虚ろにぼーっと横になっていた。あれから一時間半。
「高階君。熱冷めた?」
 天井見ながらおれが言う。高階クンは一口ビールをすすり、
「今、放心状態」
「楽しいセックス、しよか……」
 彼はがばとおれの方に向き直り、人なっこく笑い、
「やっぱやらな、終わりませんよね、赤城サン」
 元に戻ってら。
「よし。セックスは、スポーツだ」
 おれは彼に覆い被さる。思考力が激しく鈍るから、キスは努めてしないようにしよう。
 でも頭を抱え、軽くして、
「何しよ。69?バックはやったし、座位とか?」
「赤城さんがリードして。おれそれが楽しみやってんから」
「リード、ねえ……」
と目を泳がせる。おれはそんなにレパートリーないぞ。
「困ったな」
「何で」
「こないだやった、あの程度やもん」
 彼はくっくっと笑った。
「じゃ、おれは期待しすぎやった、って言うこと?」
「悪いけど。うん。おれSMは好かんし」
「じゃあの、多くは望まない、てのは……?」
「あれ。穴舐めてもらったらな、感じるし入れやすくなるの。女も一緒か」
「なぁるほど……言ってくれたら、もうえーってくらい、舐めたったのに。今からやろうかな?」
 彼は目を閉じ口元を歪ます。そういいながら、彼はケツに手を這わし、指を滑り込ませて抜き差しする。それだけで感じて息が上がるおれもどうかと思うが。
「こないだと、同じで良かったら、するけど……?」
 弄られてるせいで自分でもあだっぽくなってるなーと嫌気さす声で、そういうと、
「何かもっとないん、えげつない、」
 おれは赤くなったと思う。あれしか思いつかない。と、察しのいい彼は、
「何、何、」
と目を輝かす。
「やだ」
とおれは首を振る。
 あれはえげつないというより、ただ単におれが極限まで恥ずかしいだけのものだ。
「また長びかそーと思てェ……」
となじられるので、しようがなくおれは溜息をつき、…他になにかごまかせるようなものはないだろうかと逡巡しつつも、おれって焦ったり、緊張するととんでもなく単純な正直者になってしまうからなあ。のろのろと起き直り、ベッドの手すりを掴み、彼の顔に、自分のを寄せる。
「で?」
「銜えてもらって、…好きにしたらいいよ」
「それじゃ普通やん、」
 そう返されて、おれは顔が熱くなるのを感じ、…あー、やだやだ。おれは上擦る声でいいました。
「で、おれが自分のいいように動くの。入れさせてやんないけど、可哀想だからといって、…原田のアホが、たまにやらせるの。おれは全く、有り難くないんだけど」
 むしろ嫌なんだけど。しかし彼は凄く興味を惹かれたらしい。
「赤城さんの勝手に乱れるインランな様を眺めるわけね。そりゃ原田さんも楽しいでしょ、やろやろ、赤城さん!」
 楽しそうね、高階クン。おれはやっぱり、やなんだけど、ここで止めたら、また後引くんだろなーと、あきらめた。
「高階クン。これつらいよ」
「手加減してよ」
 そう言うとかれはちろちろと舐めた後、くわえ込む。ああ恥ずかしい。それだけでもうおれはダメ。長く息を吐き、力が抜けた。
「ダメ……やっぱおれ、動けそうにない…殆ど初めての相手に、ムリ…」
「殆ど初めて、っておれ赤城さんの淫らな姿、随分拝ませて貰ってますよ?ガタガタ言わずに、やって下さい」
 また敬語のくせに有無を言わさぬ口調で……しようがないので、おれは動いた。あまりの恥ずかしさに、でもすぐにイッてしまいそうだった。
「あ…、ん…」
 おれは首を反らす。彼はまた飲んでくれた。
「エロいね赤城さん」
 ニヤニヤと笑って彼が言う。おれはずり下がり、
「おいしい?」
「赤城さんの味がする。匂いもね……」
「皆一緒ちゃうんかえ……」
「それは赤城サンの方が知ってるでしょ。おれはあんたしか知らんもん。でも、タバコ吸わんやつのはエグみがなくて美味いとか聞いたことあってんけど、納得~って味でしたよ。原田さんもそれで止めさせたんちゃいます?まぁ赤城さんのエッチなエキスっつーだけで、飲まにゃソンって気になりますからね」
 マジかよ?!!!また原田のやつおればっかり…!あいつにも禁煙のつらさを味合わせてやる!!
 それからまたおれを押し倒し、宣言通りまた大股開きさせられると、穴を指でつつかれ舐められ、舌を差し込まれ…とかなり弄られた。指を差し入れいいポイントを簡単に探り当てると、指先で攻められる。性感に詳しいヤツにやっもらったことあったんだな、今まで忘れていたんだな、と思うような感じ。おれはそんなことを考えながら、恥ずかしさを紛らわせる。指が抜かれ、入れられるんだな、と思うとおれは言った。
「おれが、上になろうか…?」
 おれってサービス過剰?でもとにかく彼をもういいって位満足させてこれで終わりにしてもらいたいという脅迫観念があったからな。
 二人起き直るとおれは腰を落としつつ自分から迎え入れ、そしてそのまま、座位でやる。彼はあんまり動かない。おれが動き、愛撫する。
 ふと目を開けると、姿見におれたちが映っている。明るい午後の光りにくるまれて。
「高階君、あれ……」
と言えば、
「きれいだよね。おれたち」
と言う。
 空が朱くなりかける頃、また、ベッドに仰向けになってたおれたちは、目を見交わした。
「帰る……?」
「うん」
 身を起こし、シャツを手に取る。
「シャワー浴びてったら?」
「そーやな」
 と先に立ってシャワーを浴びていると、高階クンもやってきた。
 洗いっこでもする気かしら。と壁に押しつけられ、長々とキスされた。
「さよなら、赤城さん」
 少し苦い笑顔で、彼はそう言った。
 帰りの車の中、高階クンはさばさばとした笑顔であった。おかげでこっちの気も軽くなるというものだ。オレ的に頑張った甲斐ありってとこか?
「一時はどうなることかと思たけど……」
と不意に彼が言う。
「赤城さんとこ行くの、代わらんでもよさそう」
「そう。おれもほっとしたよ。高階クン怖いまんまやったらどうしようかと、」
 すると彼はくっくっと笑い、
「おれは、充分怖い男ですよ」
「それは、そうやけど」
「ひどいな」
 彼が止め、サイドブレーキを引く。家の前まで着いたのだ。
 彼がおれを見る。人なつっこく笑う。おれはドアを開け、降りる。
「良かったで……。赤」
 呆然としているおれを後目に、内からドアを閉め、手を振り彼は走り去った。

なんかコメディになってるし。おかしい。赤城くんはすっかり壊れちゃってるし。
まあなんというか、遊び人と妙な対抗心を燃やす経験浅い人を書いてみたかったのな。
そして私なりの年下攻の魅力をこれでもかと盛り込んでみたと。この作品自作の中では完成度高いと思うんだけど、原田君ごめんよ~という気持ちはいっぱいあります。

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