初もうで三都物語 神戸 2

 赤さんが客間の襖を開けて出てきて、やっと和服に着替えた赤さんが現れた。
 すんなりとした首筋に、真っ白い半襟、そしてすっきりとした濃紺の紬。きりりと引き締まった爽やかなお色気が、一陣の風のようにおれと赤さんの間を吹き抜ける。
 はい?難しい言葉を知ってるって?紬とか良く知ってるな、って?
 おれが選んだからですよ。オヤジの何枚か持ってる着物の中から。するとオカンが
「あんたは結構目が高い。これは大島紬といって、……」
とウンチクを垂れだしたのだけど、覚えているのはそのくらい。
 なんでもいい、赤さんにはこのしなやかで艶やかな生地が一番似合うと思ったんだよ。
 元のリビングに入った赤さんは、
「赤」
と立って待っていたあの男に声をかけられ、頬を染めて男を見る。うぁ、可愛い。色っぽい。
 赤さんは、この男に赤、と呼ばれているのか。それから赤さんは
「あ……」
と言って部屋の隅の水槽に吸い寄せられるように寄っていった。
「赤さん……」
「この金魚、赤さんていうんか?」
 赤さんの水槽の前に感慨深げに立つ赤さんの傍らに、すっと自然に寄っていく男。なんだか睦まじい背中。
「うん……なんか他人に思えなくて」
「……そーかぁ。それで赤に金魚の柄か……」
 男が納得するように呟き、少し吹くと、おれのオカンが、
「そうそ。ほんまイイトシの男の子にどうかと思うてんけどね~、仁史君がどうしてもあれがエエ言うもんやからね~」
 男がおれを振り向き、口の端を上げて笑った。なんか凄く嫌な笑い。恥ずかしくなる。
「おっおおおおおかあさん、」
「あらあら、照れちゃって」
「いや、実際赤によう似おてましたよ。赤の内面までよく分かってるというか…仁史君いい浴衣をありがとね」
「いえ別に……」
 だからなんでそこであんたが礼を言うんだ?
「さあさ、折角だから暗くならないうちに行ってきなさい、」
そう行って追い出され、それからおれたちは初詣に出ていった。

「じゃあどこ行きましょうか。赤さんの行きたいとこは?」
と言うと赤さんもふわふわとした髪を揺らして頷き、
「んー…と、そうだな。去年JRの森のポスターがスゴイ綺麗だったから、生田神社に行きたいかな。近いよね、ウチより、」
「いいですね…!」
 雰囲気ある森の中を赤さんと2人で散策…
「あっこ森言うもんちゃうで。行ったことなかったっけか?赤。おれと」
「なかったよ。原田そんなんすぐ辛気くさい言うて嫌がるくせに」
 なんだい言い争い始めちゃったぞ。
「じゃ、行きましょうか」
 東急ハンズの横を折れると、すぐにおれたちは某球団も必勝祈願に来るという、その神社に入った。
「なんか弁慶に関する史跡があるらしいですよ」
 弁慶は今年の大河のホットなキャラ、おれがそう言うと、
「ふ~ん」
と興味なさげな声が、男前の方からする。お前に言ってんじゃねえんだよ。
 と、反射的に2人の方に顔を向ける。
 なんたることかおれと赤さんの間には、あの男が……
 するとその男がおれにだけ分かるようにニヤリと笑い、そっと顔を寄せ、
「おれのこと邪魔や……と思てるやろ」
「そっそそそそんなこと」
 最初の鳥居を入ると、男は左手を見、
「赤。ホラ、トイレ行っておけ。着物は足腰が冷えそうやからな……」
 そしてナニやら耳打ちする。ああ、うらやましいなおい。この冷気の中、赤さんのほの温かい体温といい匂いが嗅げそうじゃないかおい。
「な……」
 そう言って男を見返した赤さんは心なしか恥じらいを浮かべていた。
 しかし言われるままに移動しだす。おれも行こうかな。……もしかして赤さんのかわいいモノがあの裾を割って見れるかも…そのときちらりと眩しい太股まで見えたらどうしよう…これは行かなくては!
「じゃおれも、」
「君はいかんでええ」
 後を追おうとしたおれの襟首を掴まれ、おれは行けなかった。
「君、赤のこと好きやろ」
「なっ……!赤さんは男ですよ!」
 すると男はニヤリと笑い、
「そんなの、関係ある……?おれは赤が、好きやで」
「へ………っ?」
 やがて赤さんが戻ってくる。なぜか頬染めて、目が潤んでて、ぽってりとしたさくらんぼのような唇も濡れてはにかんでるような表情でとてつもなくムンと色っぽいのですが……?男の劣情をそそる。
 そう思ったのはおれだけじゃなかったらしく、
「赤ー。ぐっと色っぽくなったな」
と男も目を細めて赤さんを慈しむように見る。
「バカ……」
 頬染めたまま拗ねるような顔して赤さんが言う。あああ。たまらん。
 でもなんだこの雰囲気。このモヤモヤむずむずした感じは……
「じゃ、参ろうや」
 にこにこして男が言い、おれたちはラッシュタイムみたいな人混みに突撃する。赤さんの隣に行きたかったのに、結局また左から赤さん、あの男、おれになってしまった。
もう少しというところで渋滞し、足止めをくらう。と、おれの左肩をちょんちょんとさす男。おれは反射的に見る。すると男もおれを見下ろしながら(おれより彼の方が高かった)またニヤリとし、視線で下を見ることを促す。
 つられて見ると、男の右手が、不埒にも赤さんの着物の裾に忍び込み、……
「あんん……っ」
 微かにピクリと反応する赤さん。濃い紺の着物の裾から、白く輝く内股が覗く……そして……男の手はもにもにと揉みしだく動きをし……ぴょこっとなにやらかわいい動物が頭を出した!
「!」
 おれは下半身にズーンと血が集まって痺れてきて…動けない状態で良かったと思った。
 男はニヤリとまた笑う。
 そして赤さんを探っていた手をおれの前に持ってくる。その手が開き、白いハンカチのような布が少し見えた。おれは反射的に手を差し出す。その手にほんのり温かい布塊が。
「お年玉」
 また笑って言う男。それは……脱ぎ立ての……だった。
 はっきり言って、そのあとのことは覚えてない。


そのちょい後の赤城君。
「もーっ。おれのパンツどこいってんー!」
「素直に脱いでくれてホンマかわいいなお前……でもスゴイ興奮したやろ。お前物凄い潤んだ顔してたもんな」
「お前が着物はノーパンとか言うから……!そ、そんなことエエから、袂に入れといたパンツ知らん??(焦ってる)どっか落としてきたんやろか、」
「大丈夫大丈夫」
「ナニがや、下から風邪引く~~、」
「大丈夫、今から熱くなるから、」
 そして2人は●はじめへ。
 あ~れ~付き。着物は後日クリーニングして返しましたとさ。



END

今日行ってきましたにょ。生田神社。結果はオーライ。やっぱ行くモンですね。決まってたネタもすいすい進みました。

Copyright 2005 Lovehappy All Rights Reserved.