こうそくドライブ 2

 原田のヤツは、オレの身体の中にバ……バイブを、仕込んでいた。
 どうして気付かなかったんだろう。いつ入れられたのか。なんで……いやそれもさることながら、いつ買ったのか。おれの知らない間にショップに行って買ってきたとは考えにくい。
 となれば通販だが、未だに原田のヤツはエロビデオを通販してる。その包みが何週間か一度に届く。おれは呆れて宛名も発送元も見なかったが、そのなかにのうのうと紛れ込んでいたに違いない……くそ。今度から一々中味までチェックしてやるぞ。
「………、」
 そんな後悔のうずまく頭と裏腹に。
 車内にはエンジン音。そして微かに…いやこれが安モンなのか、そこまで静かじゃない、いやらしい別のモーター音が響く。
「ねぇ、音うるさくない?」
「ん?CD?あぁ消すわ」
 そう言って原田はCDを止めた。
「違う、……」
「え?何がうるさいの?」
「……モーター音……」
 心臓が破れそうになりながら、細い声しかでなかった。
「安モンちゃう…?ねえ、止めて……」
「失礼な。お前を悦ばそう思てええやつ買うてんぞ。ホレ、リモコン式やし、シリコンやし、動きも色々……、音も静かやで~。おれが楽しめる程度に」
 そして何やらリモコンを探る。や、やめてくれ!回転が逆になって、粘膜が……おれの柔肌、つーか無防備な粘膜が!
「ああ…ん……原田、やめて、お願い……」
 目はつむってるけど、原田が、楽しそうにおれを見てるだろうことだけは判る。くそー1人楽しまれてたまるか。
「原田…お願い、前髪が邪魔やねん……なんか目の辺りがかゆいねん。腕、ほどいて」
 こうなったらおねだりモード…目を見開き、すくい上げるように原田を見上げてお願いしてみる。原田は喉仏を上下させたが、
「どのへん?払ったるわ」
 と額にかかる前髪をさっさっと片手で払われた。
「そのへんとちゃう…払うだけやと…まだかゆい、」
「このへんか?」
 運転しながら、原田の左手の指がイヤラシイ動きでおれの額や顔を這い回る。なんというか、微妙なタッチで…首筋辺りを執拗に掠められ、おれは身を捩りゾクゾクする背中をおさめようとする。すると体内のものが…
「あんっ、」
 余計つらくなった。
 バイブは身体の中をいやらしく身をくねらせ、肉壁を抉るブツに、熱が溜まって腰の疼きはたまらなくなってきた。
 こらえきれず足や腰をもぞもぞと動かせば、体内のものは更に自己主張するが如く角度を変えておれを攻撃する。
「ん………」
 予測のつかないその動き。感情のない無機物は、悪魔のように体内を蹂躙し、痺れる程のイイトコを先端で突いたり、掠めたりする。
「あ……っ」
 その度に、びくんと身体が波打ち、予期せぬ高い声が鼻から抜け、その動きにまた…の繰り返し。
 前はすっかり震えて立ち上がっていた。……でも楽なズボンなので…原田が長時間座りっぱなしだからリラックスできるようにこれ履きなさいとやわらかくゆったりした薄手のジャージ風の、でもしゃれた上下をくれたのだ。…確かリボンがけしてあって、ブランド物で、これが誕生日プレゼントだったと思ったけど?
 今から思えば、セットだったに違いない。オモチャと。どうやら下着も脱がされているらしいおれの下半身は、柔らかい布地の中ゆったりしていて、布地を押し上げているモノの形まではっきり判るようになっていた。しかも…先端からだらだら出ている液が、布地を変色させて張り付かせていた。


 振動、モーター音にタマラナイ羞恥を感じ、自分を支えたくて、何かを踏ん張って踏みしめたくて、足が前方を蹴る。でも何もなくて空しく空振り、ただ余計深く感じるだけ。その度にモーター音も唸り、これでもかと錐もみ、抉ってくる。息はすっかりはぁはぁと荒くなっていた。
 時折横をぶうんと車が追い越してゆく。その度に見られている、と思うと堪えられない。
 第一こんなワイセツな……訴えられたら、どうするんだろう。
 堪えられない……
「出して……抜いて、原田、」
「ごめんな。ご覧の通り、良く流れてるし勿体なくて止まられへん。SA、PAもなかなかないしなあ~」
「ば、かぁ……あ、あっ、」
 文句を言ってやろうとしたら、また動きが変わった。ぐいっと捻られて腰がひくつく。足があがく。
「すぅげいやらしー…。断末魔みたいにビクビク、ビクビクしちゃって…はあはあアンアン言われて、煽られるわ…もう~辛抱たまらんわ」
 ウソをつけ。楽しげに余裕ある声でいいやがって。
 つくづくあの画像データが憎い。あれさえなければ…いやあったとしてもいづれ寝てしまったとは思うが、もっとこう…こんなに早いうちから、やすやすとは入れさせなかったのに…と思うのに。
 自業自得、と言われても歯がみするしかない。でも不可抗力だったんだ!打ち合わせの時間は決まってて、2案作るのぎりぎりで、…A2ポスターのラフを2案作っていったのだけど、印刷に必要なクオリティの画像ってのは大体が重い。でもA3くらいまでならある程度作成も我慢できるけど、ポスター用の画像ってのは…とにかく重い。作成中のデータは500MBなんか軽く超える。
 で、そんな大きさ、クオリティ的に持たないことが多いので、大きい画像ってのは、持たすために必然加工しまくりになる。フィルタかけまくり、レイヤーだらけ、その処理だけでもひとつにつき何分もかかったり…ほんとはこまめに保存したいところだが時間が推してるし、ヘタに保存して10~20分ムダにしたくないので、大きい画像ってのは大抵博打を打つはめになる。微調整し、全てOKになってから最後に一回だけ保存…。それが裏目に出た。ハリツケ画像そのものは別名保存で残っていたが、その元データを保存しているときに余りの負荷にかマックが固まった。
 だからラフ用の低解像度画像(アタリ)だけを残してデータは消滅してしまったのだ…
 それでなくとももう1案の方がクオリティ的にも進められる出来だったのに…あれなら直ぐに終わったのに。
「この写真のここ、もうちょっとよく見えるようにしてよ。あとこれ、色換えできない?」
とか言われて……。元データがあればそんなのちょちょいのちょい(古?)なのだけど…

 そんな益体もない後悔をまたしていると、不意にびりっと体内に電流みたいなのを感じ、
「あっ……」
と顎が上がり、微かに声が漏れた。腰から下が、変に強ばる。強ばると締め付けてしまう。締め付けると前もぐっと固くなり、揺れる。ああっ、いやだっ、そんなそこ拷問……、おれはその責め苦から逃れようと、位置をずらそうと腰をずりずり、ゆらゆら揺らす。
 もう、はあはあなんてもんじゃなかった。はあぁー、はぁぁーと走った後みたいな…
 いい加減イッて楽になりたいのに…微妙に、てか自分で強い刺激に堪えきれずについポイントをずらしたりするせいか、イケそでイケない苦しい状態が続いていた。アレもつらそうにナミダを流して震えているよ……
 しんどいからいっそ寝てやろう。ええぃ、寝てやる…
 寝てしまえば、こんなつらい快感も感じずすむし。そうだ動くからより感じちゃうんだから、ちょっとじっとしていてみよう。
「………」
 目を閉じて俯いてじっとしてみた。するとまた体内の動きが変わった。びくんっと反射的に動いてしまう。
「あんっ」
「寝たらあかんと、言うてるやろ」
 ひ、ひどい…
「原田……、トイレ、」
 いい加減トイレなら腕解いてくれるだろう…外に出る時、抜いてくれるとは思えないが、個室に入ってしまえば、人の多いサービスエリアのトイレに着いて入ってくることはないはず。中で抜いちゃえばいいのだ!
「あ、そろそろか?じゃ次寄ろうか」
 フォークとナイフの標識が、おいでおいでをしてくれているように見えた。

なんか一気に書き切れなくて、更に続いてしまいました…

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