素敵な正月の過ごし方

 素敵な正月の過ごし方ってなんだろう?海外で迎えるお正月?温泉宿で雪見酒とおいしい料理なお正月?家族団らん、こたつでみかんなお正月?
  …それともやっぱり、好きな人と迎えるお正月?
 田舎出のおれは、今年ちっとも代わり映えのしない、味気ないつまんない正月を送っていた。
 去年、付き合って2年目の正月はおれの彼氏、原田の宣言通り、一緒におれの田舎に来て、一応家に一泊だけして、あとは友達と一緒だからと近くの温泉街の、地元民しか知らないようなひなびた温泉宿に泊まって、観光したり、H三昧したり、…まあ温泉宿なお正月を過ごした。
 しかし今年は、おととしは帰らず二人で過ごし、去年は帰っても二人で過ごししたので、向こうの親からも、こっちの親からも、
「たまには帰ってこい」
と言われてしまい、あんまり二人でくっついて行動してると怪しまれると困るし、…さすがに親には、まだ言えなかったので、今年は別行動ということで一人で帰って来ていた。
 実家には楽しいもんもないし、テレビも飽きたし、友達も、最近そんなに会わないしで、退屈…と思いながらも、それでも家でテレビ見てごろごろしていた。
 そんな元旦の(元旦でもう飽き飽き)夜、高校時代の友達から電話があった。
 音楽とかの趣味が合い、3年間で一番仲良くしてたヤツ。高校出てからたしか公務員になって市役所勤めしてるヤツ。田村。
「明日同窓会あるって知ってるだろ?帰ってきてるって聞いてさ…、来いよ」
とか言われてしまい、おれはハタから見るとかな~り情けない顔していたと思う。
 おれは、まだ同窓会なんて出たくない。大半のやつは結婚したり、そこそこ安定した生活していたり、おれみたいな過酷労働に泣いたり、ヘンな恋人のいるヤツなんていないから、…なんか哀しくなったり、ボロが出たりしそうでヤだから、出たくなかったんで「欠席」ってゆってあるんだ。大体宴会っぽいのは好きじゃない。
「…お前と二人で会うくらいならいいけどさー…同窓会は、あんまり行きたくない」
と言うと、
「でも皆、会いたがってるから」
とか言う。ちょっと待て。皆?
「なんで皆、なんだよ、」
「オマエんちの近くの井上がオマエ昨日見たって連絡網で回ってきた」
「………」
 おれは脱力した。こっちは、気付かなかった。どこで見たんだ、スーパーか?
「なーんかあか抜けてかっこよくなったって言ってたらしいぞー。それで皆見たがってるらしいって。おれも長いことオマエに会ってないからさー、来いよ。なんなら、迎えに行くから、」
 力が抜けつつも、ここまで言われて断るのも大人気ない。おれはしょーがないから行くことにした。
 田村だって、確か結婚してたよなー。あー、ヤダヤダ。とか思いながら。

 宴会場、じゃない、同窓会場は田舎の結婚式の披露宴で使われるような地元の、まあ、宴会場。
 のおれのきらーいなお座敷。この若さ、27で座敷で同窓会?勘弁して欲しい。すっかり地域社会に密着した主婦連になった元女子生徒がビール注ぎ回りとか始めるんだろ、勘弁して欲しい。
 ましてや一人一人挨拶なんかさせたらおれは死ぬぞ!
 と思ってたらさすがにそんなことはなかった。ちなみに、やっぱり一人で行くのは気が進まなかったので、田村に迎えに来て貰った。
 スープラなんかに乗っちゃって、あんたはまっとーに人生歩んで行ってるね、とちょっとブルーになりつつも、向こうがおれを見ると満面笑みで破顔するので、こっちも少しは楽しく過ごせるかなーと気が軽くなった。
「赤城君、ひさしぶりー!どうしてたの?」
「いやーほんとにカッコイイ~」
とか、元々クラスでも愛想良く、積極的だったような元女子生徒が寄ってきてビールを注いでくれる。
「今何してんの?」
と言われれば、
「印刷関係…」
としか答えられない。あまり詳しく説明しても、絶対分からないだろうと思うし。
 昔つるんでた友達は勿論、あんまり縁のなかったやつまで、寄ってきては、
「雰囲気良くなったじゃん。オッ指輪してるやん、結婚、した?」
とかうるさい。でも関心持たれて悪い気はしないから、意外と楽しく、時間が過ごせた。けどやっぱり大半は結婚して、子供も居るわけで。
 大分座が乱れてきた頃、田村が
「ちょっと外出ようぜ」
とおれを誘う。ここは宴会場だから、外にはそれなりの庭園がしつらえてある。
 おれもちょっと息抜きしたかったので、「いいよ」と答えコートに手を伸ばした。
 外は結構寒かったが、酒が大分入っていたから、それもひんやりと心地よかった。おれは池の端に生えている松がなかなかいい枝振りだとか思いながら歩いていたが、隣の田村は、ずっとおれを見ている。
 おれは、今彼氏持ちで、なんだか良く分からないけど、都合4人の男と関係を持った。女は、ナシ。
 でも、高校時代はまだ普通の男子だった。だけど、今考えれば、ソコソコそういう風におれを見ていたらしいヤツは何人かいた。
 田村も、その一人だと思う。
 何かと肩を抱いたり、妙に優しく気遣ってくれたり、…していたと思う。
 ヤバイな…と思い、それに少し冷えてもきたし、
「おれ、トイレ行ってくるわ、」
とUターンした。すると田村も来る。
「おれも冷えたし、行くよ、」
「え…」
 おれはトイレにはあんまりいい思い出はない。というかHな思い出が沢山ある。トイレは、ヤバイとこだと思ってる。
 そこでトイレに着くと、
「おれ、デッカイのしたいんで、」
と個室に入ろうとした。すると、おれを押し込み、田村が入って後ろ手に鍵を閉める。
「田村…!」
 低く、小さく、でもたしなめるように言うと、田村は射るような目で、
「赤、キレイになったな…色っぽく。好きだった。ずっと」
とか言いやがる。
「田村、オマエ結婚してんだろ?おれも相手いるんだよ、だから出ていけよ、」
「結婚?お前知らんのか。離婚した」
「えー、いつ?…てゆうか、おれ連れ合いいるからさ、…」
「ずっと好きだったんだ、お前だっておれのことまんざらじゃなかっただろ?」
「それは友達としてだよ、」
 いや、当時何らかのことがあったら、おれのことだから、あっさり受け入れて今とは別の道を歩んでいたかも知れない。自分の体も気持ちも、全然大事にしてなかったから。…でも結局は、そういうことかよ。
 田村はおれを抱きしめると、片手でファスナーを開け掴む。少し、息が漏れる。
「好きだ…」
「田村。おれは、したいんだよ、デッカイの。着くぞ、ヤッたら」
 身を捩り、抵抗すると、するとやつはおもむろにポケットから小さな袋を出し、
「あるから、大丈夫」
 こいつ、計画的か…!なんかぞっとし、ついうっかり、
「それは、滑りが悪いからイヤ!」
とか言っていた。ヤツはボーゼンとおれを見つめる。
「お前…、」
 おれは顔を逸らす。すると開いた前から後ろへと指が移動し、少しずつ、差し入れられる。羞恥とない交ぜで、感じてしまい顔に出る。息もすぐに、上がる。
「感じやすいんだな」
 田村が耳元で、凄く熱い息で言う。彼は片手でがっちりとおれを抱きしめたまま、指を2,3本入れてかき回してくる。何日ぶりだろ、じゃない、相手は、田村だぞ!
 もう二度とこいつに会わない、と憤慨していると、
「お前、おれを現地妻、じゃない、現地夫にしないか?」
とか言う。
「おれはもう、帰ってこないし、帰ってきてもお前には会わないよ」
「じゃあおれはお前がそういうやつだとバラすぜ?」
「バラせば…?おれはもう、そうされたら、田舎には帰ってこないし、どーでもいい」
 するとヤツは哀しそうな顔をした。
「赤…!」
「おれ、昔だったらOKしたかもしれないけど、今はダメだ。絶対。…早く、抜け」
 なんだか複雑な顔で、彼は指をぬくと、おれのを掴み、
「ごめん。おれ、どうしてもお前が…一回だけ、お前のイくとこ、見せてくれ」
としごかれた。
 彼はおれの反応を満足げにうっとりと見終わると、手についた精液をゆっくりとなめ取った。
 息を収め、彼から目を外し身繕いをしながら、おれは田村に言った。
「おれの彼氏、見る?」
 ポケットの手帳に入れてた写真を見た田村は、一瞬眉を寄せ、それからフッと笑い、
「…そんなんじゃ勝ち目ないよなー」



「ごめんな」
と帰り際、駐車場で田村は言った。
  もうおれは彼の車になんて乗って帰りたくなかったから、他の家の近いヤツに頼んだから。
「でもおれ、…」
「その先は、言うな。…友達、としてなら、言ってもいいから」
「いつかそう言えるようになるといいな」
「早く再婚しろ」
「いや、離婚はウソ。子供ももうすぐ産まれるし」
「お前…!それで欲求不満だったとか、言わせないぞ、」
「…そう言った方が、お前はほんとは安心だろ」
 そしてじゃあな、と手を振り田村は自分の車に乗った、

 今年の正月は、最悪だった。
 来年からは親に何言われてもいい、二人で過ごそう、二人でだったらなんでも素敵だから、…と思いながら、でも、田村を思って切なくもなりながら送ってもらい家まで帰った。


END

…なんでスープラ?って聞かないで下さい。なんとなく浮かんだんです。でも、田舎モンはいい車乗ってますよ!
キライでも、ビョーキがイヤならHはゴムつけるか、潤滑剤をきちんと使おうね、赤城君!って私が付けてやんなきゃダメなのよね。
ともあれ今年が皆様にとって良いとしになりますように!

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