今年と今年の間に

 今年も色んなことあった。
 でもそれも、さよなら、さよなら。除夜の鐘と共に過去のものへ。

「あーあ」
 何となくリビングに置いてるコタツの上で、カップそばを食い終わり、みかんを剥きながらそんな声が出る。
 横のこたつの側面では、コタツに足を突っ込んで、コタツ敷きになってるラグに長々と寝そべってる原田が、そんな声にテレビからこっちに顔を向ける。
 テレビからは、なんとなく付けていた「ゆく年くる年」が始まり、来年へのカウントダウン、除夜の鐘が煩悩の数だけひとつ、ひとつと鳴っている。
「何?そんな声出して……」
「だって、今年はこんなカップ麺で年越し、正月休みなんて…、」
「しゃあないやん。仕事やもの。…とはいえ、何の予定も立てられへん生活もいい加減飽きたな。そろそろなんか違うことするか?」
 下請け零細企業のつらいところ、休み前や連休前には、必ず「休み明けに下さい」ってな仕事が入る。簡単なものならいいのだが、また沢山重ならなければいいのだが、本来休みな日々に残ったそういう仕事を片づけるのは、それも年越しぎりぎりまでやるのは実になんだか空しい。お陰で温泉旅行もましてや海外なんて…。
「違うこと、ねえ……。何したいん。そもそも」
「そーやなぁ…無難なとこで、飲食店とか、物販?」
「そんなんもっとあかんやん。人が休んでるときに働かな…今頃必死こいて働いてる頃やで」
「でも休みは予定通りに取れんで。オフィス街やったらさ、日曜とか会社並に休みとるやん」
「でも食いモンはあかん。怖いもん。食中毒とか色々と、」
「まったお前は悪いことしか考えへんなー。…おれらやったら、こじゃれたカフェとかやったらさ、ウケると思うけどなー…メニューも少なぁてええし、紹介してもらうコネは充分あるし、」
「またウヌボレ……女性客に大人気!とかって紹介されたいんやろ」
「ウチもネット商売でも始めてみるとか…在宅でええし。…なんかキャラクターで一発当てんのもええよなぁ~」
 その時CMに出た人気キャラを見て原田が言う。
「ネット商売、それこそあかんやん。コンビニと張りやん。時間のなさ。…誰がどこでキャラデザインするん…」
「高階にそんな仕事探させたら、どこかで引っ張ってくるんちゃん?」
「おれは少なくともキャラクターとか苦手…お前が描くんならええけど、」
 すると口をへの字に曲げる。彼は結局、絵は描けない。下手ウマシュール系に流れていくタイプだ。結構それがウケるかも知れないが。
「じゃ~~お前は何したいん、」
 そう詰るように言われて、また溜息ついてしまう。
 するとその俯いた顔にかかる長い前髪を、伸びてきた原田の手が払う。
「……髪、伸びたなぁ」
「切るヒマなかったからな」
 一旦払って、軽く握り込まれて…、そのまま引っ張られるように顔を寄せ、原田は肘で支えて上体を起こし、そっと唇が重なった。
「……色っぽいわ」
「そう?……」
 そのまままた重ねて、そっとラグに押し倒されて、覆い被さる原田の手が、部屋着のスウェットの裾から潜り込む。
 ゆるく撫でられた後、脱がされた。そして暫し見下ろされ、髪に顔を埋められ、…
「髪の毛さん、ありがとう」
と囁き口づけた。
「は?」
「おでこさん、ありがとう」
 そしてチュッと音立てて口づけられる。
「な、何しとん……、」
「決まったあるやん。今年お世話になったご挨拶やんか、」
 そして彼は瞼さんや耳たぶさん、ほっぺたさんや首筋さん、鎖骨さん…とご丁寧に挨拶しながら全身くまなく口づけて言った。
「ビーチクさん、ありがとう」
 そんなこと言って吸い付かれた日には、恥ずかしい上、なんか異常にくすぐったくて、ゾクゾクする。しかも首から下は、徐々に強く吸い上げていく。
「あ……、」
 焦れったい唇の動きは、ジクジクとした緩い快感を孕ませる。こんなんで結構下半身には熱が溜まってきて、ちょっと触って欲しいくらい。でも原田は、口以外で愛撫はくれる気はないようだった。思わず焦れて腰を揺らす。
「原田……早く、」
「ちょっと待てや。ちゃんと挨拶終わらへんとやったら、無礼モンやと思われるやんか、」
「誰にやねん……」
 脇腹を滑り降り、へそにも挨拶され、足を広げられ、足の付け根まで来て、ああやっと…と打ち震えると、内股さん、膝の裏さん、ふくらはぎさん、…とスルーされてしまった。
「ああ…っ」
 おれは緩く頭を振る。全ての指の先まで行くと、今度は反対の足の指から、逆辿りで上ってくる。
「タマタマさん、ありがとう」
 そう言ってついばむ。もう痺れる。
「あ……」
 彼の下はそのまま下へ辿り、下の口に吸い付き、口づけるようにして、
「コーモン様、ホンマありがとう~」
 と息を漏らしながら言う。その息にすら、過敏に感じる。そしてついきゅっと締まる。
「ん……」
 そこを舌先でノックするようにつついて、すっかり血が集まり敏感になった粘膜に差し込み、抉られる。
「…あ…っ、あっ……」
 ゾクゾクして、のけぞってしまう。足がつま先まで不自然にねじれ、原田に絡める。
 原田は丹念におれの中を探る。でも舌の届く範囲なんて中途半端で…そのぬるい快感は焦れたおれの身体をもっと明確な刺激を求めて思う存分淫らにくねらせる。
「原田…もっと……もう……」
 こんなんじゃ苦しい。でも彼は一番お世話になってる所以か、しつこく嬲る。
「あ…ん。早く……」
 舌が出ていく。追いすがって、ぎゅっと締め付ける。
「カワイイな」
 原田が笑みを含んだ声で言う。やっと肝心なとこに口づけて貰える。その期待ではあはあ喘ぎ、熱くなるおれの身体に、原田はイキナリ押し入ってきた。
「ああっ……そんな、っ……」
 喘ぎ、四肢が痙攣する。アソコも震え、蜜を零す。
「あん、あん、あん、……」
 いいとこをズリズリ突かれ、もうなんかメチャクチャになってしまいそうだった。触ってもくれないし。いやかなり激しく突かれて、メチャクチャになっていた。
 ウチからの刺激だけでイキそう。こすられて。もーちょい、もーちょい……と気持ちよさに意識が集中しかけたとこで、ずるっと抜かれる。
「ああ……ん」
 また、みっともないくらい痙攣した。すると、やっと
「チンコさんありがとう。…涎垂らしまくりやな」
と先端に口づけられ、暖かい粘膜が包んでくれた。深い溜息が漏れ、粟立つような感覚のあと、今度は身体が弛緩する。
「あ…っ」
 腰を浮かし、原田に押しつけ互いの動きで増幅する刺激を追いかける。
「あ……」
 出た、震えながら放出してる間に、実にいいタイミングで時報が鳴り、「おめでとうございます~」に早変わり。
 凄い年越しの瞬間…。沈み込むようなけだるさの中、なんか感心してしまっていた。
 原田は喉を鳴らし全てを飲み込む。
「ごっそさん」
 息を切らしていると、上ってき、口づけられる。
「唇さん。今年もよろしく」
「は?」
「鼻さん、今年もよろしく」
「ちょ、ちょっと……」
 原田は今度は全てに「今年もよろしく」と挨拶して、同じぬるい責め苦を味合わせてくれた。
 そして、今度はおれの中に放って…。
「ほんまにお世話になります」
とか挨拶してたのだった。
「おれの意識は、人格には挨拶なしかよ、」
「ヤッてるときの意識なんてないもん」
「……」
「ウソウソ。カワイイ声と、おねだり今年もよろしくお願いします」
「………。おれも挨拶しといた方がええよな」
 すると眩しそうな笑みを湛え、
「してくれんの?」
と自らおれを抱き取り仰向けになる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 まずそうぺこりと頭を下げると、原田にして貰ったように全身丹念に挨拶と愛撫を繰り返していった。熱い身体が、愛おしい。
 中心に口づける頃には、原田の胸が大きく上下し、微かな喘ぎが色っぽく響いていた。
 おれもタマをついばんで、…そして。
「今年こそ、よろしくしてもらおうかな?」
 深い窪みの底のある穴に口づけると、彼は身体を跳ねさせ「ひゃっ」と言った。なんか笑ってしまう。
「めっちゃ感じてんな」
「びっくりしただけやわ。そこはよろしくしてもらわんでもえーわ」
「えーでも、おれかってさあ~たまにはしたくなることも、あるやん?」
 舌先をツンツンと押し当て、ちょっとだけ潜り込ませると、
「うひゃ、」
と色気ナイ声を上げ、腰を引く。
 そして溜息一つ。
「……そーやなあ。そういうお前見んのも、悪ないかなあ~」
「でしょ」
「新鮮なちゃう色気見れそうやなぁ…見たなってきたなぁ…。でも入れたらあかん」
「ケチ。…じゃどうやって見る気なん。おれが女の子相手してるとこでも、見る気なん?」
 彼の脇の下に両手を突き、彼の足の間に身体を入れて見下ろすと、こんな体勢でも渋い笑みを見せ、
「これ」
とその大きな節を感じさせる手を広げる。
「?」
「これでやんなさい」
 そう言って両手で筒を型作り、自分のモノに手をかけ、おれを待ちかまえるように広げ、揺らめかす。
「……じゃ」
 おれはその筒に突っ込み、絞り込む彼の手と彼のモノに擦り付け、こすりながら腰を前後に進めた。あーなんか男って実感する。擬似でも。
 そんなおれを見上げ、
「いい。色っぽい…ゾクゾクするわ」
と言っていた原田だったが、スパートかけて集中して激しく腰を動かしてるときに、
「あっ、」
 ひっくり返され。
「めっちゃ犯したくなってきたわ」
と一気に突っ込まれてしまったおれだった。突然すぎて、一瞬過ぎて、
「ああーっ、……」
と偉く長く濡れた声を発してしまった。

 結局こうして、今年もヤラレ三昧も予感させる年明け…でもまぁいいか。やっぱ本気で原田をやりたくはないし。と流されるおれなのだった。





END

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします…この話、いつの年の話でしょねぇぇ。いつでもいいです。独立してからのいつかのお正月ということで。アホな会話とエッチが書いてみたかったのでございます…それと犯す(擬似でも)赤城君。

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