彼の髪が好きな理由(ワケ)

おれはやつに会えるのを心密かに楽しみにしていた。
 小学生のときの夏、ほんの1日2日、それも数時間会っただけのやつを。
 今まで誰も認めたことのないおれが、GKとしての資質を認めた男。
 その独創的なプレーで、同じポジションで、唯一ライバルと呼んでもいいとおれに思わせた男。
 なんの美学か薄汚れた格好をし、妙にかっこつけが激しく、また、それがピッタリ板についた、小学生らしくない生意気そうな男。自分たちのコワモテ主将を立てつつも、対等感を漂わせていた、長身の、年の割には落ち着いた男。
 
「健ちゃん!」
 なんだか素っ頓狂気味の高い声が、ヤツの名前を呼ぶ。おれは声のする方を反射的に見た。
 あいつは他人にそんな呼ばせ方を赦すようなやつじゃないと思ったんだが…
「そんなデカイ声で呼ぶな。バカ」
 やっぱりな。呼ばれたヤツ、あいつが…人混みの中からその姿を現す。長身のため、頭一つ抜けていてすぐにそれと分かる。やつは随分伸びた髪を掻き上げた。うつむき加減の頬を、掬われた髪が風にさらわれながらなでてゆく。
 その全貌が見えた頃、おれはえっ、と呆気にとられることしかできなかった。
 清潔そうな、パリッと真っ白のシャツ。細身のネクタイがなんだか華奢で繊細っぽい。隣の色黒男や、その辺にいる回りの連中も皆同じ格好をしているから要は支給品の制服みたいなもんだが、そんなことを思わせないほど似合っている。着やせするのか、長身で着姿もすっきりしていてやたらに見栄えが良い。前と同じ、いやより伸びた髪は、前髪だけは前より短くて、いい匂いが漂ってきそうで、なんだかこぎれい、こざっぱりとしている。清潔そうなこの男なんてこいつじゃない。
 うつむいていた顔が上がり、フとおれと目が合う。決してでかくはないが、印象的な黒い、きれいな目。長い睫。薄い二重の瞼。ほどよいまろやかさの頬から続く、とがった顎。通った鼻筋、そしてふっくらと形のよい唇。色は毎日のスポーツで一般人からすれば灼けているだろうが、地の肌が白いのだろう、ここにいる中ではかなり白く浮いて見えた(イチローを思い浮かべてもらいたい)特に隣にいるやはりデカイ男が際だって黒いだけに…
 なんなんだ?こいつは?随分雰囲気が違うが、間違いなくあいつだよな。
 やつはおれにふっと笑みかける。
 …美人に、なっちゃって…
 おれはそんなことしか考えられなかった。

ごめんなさい、やっぱり触りだけ…になっちゃいました~(汗)
せっかくありがたくも「読みたい」って言って下さった方がいたのに…私のバカ…代わりにあんなモン、アップするなんて…
 でもこの話の源さんもあんな具合のコワレですよ。あっちはどっちかというと健ちゃんがコワレでしたけどね。
 一応これは、JY編のお話なのです!最近ブックオフで全巻揃えてばーっと読み終わったときボワ~と浮かんだネタというか…また読み直さないといかんなぁ

とかいいながらはや●年。すいません続きは完全に吹っ飛んでしまいました。

Copyright 2005 Lovehappy All Rights Reserved.